E217系電車 最終確認時期:2002年7月

JR東日本の新世代通勤車両の一角を担っているのが横須賀・総武快速線のE217系です。口の悪い人(<自分だろ、自分)に言わせれば「走ルンです」。確かに、安っぽいと言われれば否定材料は…ありませんねぇアコモデーション的にも(笑)。

乗降時間短縮のため、それまでの3ドアを4ドアにした為、セミクロス割り当て部分の先頭車は運転台・ドア間隔の関係でクロスシートの設置が変則的になっています。

モーターユニット車両(中間車)のセミクロス部分です。ボックスシートはドア間に1つだけ。左右のドアから奪い合った場合に衝突した日には…いや、気まずい(笑)。

座席は全てカンチレバーになっており、清掃しやすいようなフラットな空間になっています(但し、量産先行車は通路側に補強用の脚がある)。床下に荷物も置けるので利点と言えば利点ですが、欠点として冬はメチャクチャ寒いです。タダでさえ貫通扉が少なく、ドアの構造上からすきま風問題が残っている新系列にして、床下がスルーな為にヒーターの熱は無効化されています。ヒーターの出力が足りていないこともさることながら、「頭寒足熱」という古来よりの格言に全く逆行しているのはいただけませんね。

ロングシートの先頭車です。車体が4ドアにつき、小田急や相鉄の雰囲気に見慣れていれば、その配置に違和感はありません(そりゃ、見付やパーツは違和感アリアリですが)。少々車体幅が広がったので収容力は向上しています。

ボックスシート部分。シートピッチ(ボックス間ピッチ)は1500mm、FRPもまぶしい(株)コトブキ(知る人ぞ知る…的か?)製造のユニットです。

座面からランバー部分に掛ては、ロングシートと同一のパーツを用いています。そのため、座面高〜腰回りまでは全く同じ…背面は単にビニールレザーによる当て地です。登場当初、従来のボックスシートのつもり(と言ってもそれ自体は相当に薄地ですが)で特攻した人は良くタンコブを量産していたとか…。肘掛については、出入りを考慮して文字通り「肘掛」サイズになっています。背面・ヘッドレストについてはサポート性を期待してはいけません。

座面幅こそ450mm、男性客が座ると間違いなく通路側席に侵犯します。それだけにあらず、窓框の形状の悪さから腕にFRPが食い込む最悪環境が実現(笑)、実効占有幅はカタログ数値-3cm程度。図面で実感できずとも、組み付けモックアップで検証すれば一発で判る程度の凡ミス級設計なのですが、後継車両でも改善の素振りすら見えません(苦笑)。毎日使っている人ならこんな設計、絶対しない。ってか、これについて異論がある関係者はメール下さい。マジで。

先頭車にある優先席ボックス部分です。違うのは座面・ランバー部のモケット色だけ。それ以外は全く一緒です。この座席の座面高は、従来の通勤電車と同一の430mmながら、沈み込み量がほぼ0の為、カタログ通りの数値となります。

小柄な高齢者ではほぼ確実に脚が浮きます。立ち座りこそ多少楽ですが、脚が浮いてしまうと言うことは着座中は上半身の重さと列車の揺動がミックスされて腰に過大負担を掛ます。極めてブラックジョークですが、高齢者への積極的な着席を勧められない座席になってしまっています。ここにして優先席…おいおい。

ロングシートとの接合部です。ボックス席側背面にうっすらとロングシート部分の人向けの窪みがあります。この窪みの深さを見てからボックス席を見ると窓側の人の為に確保された空間がいかに無茶苦茶かが良く判ります。

蛇足ですが、ボックスシートの通路側に付いている手摺りの塗装は非常に良く剥がれます。剥がれた後の色が見事な対照色になっており、良く目に付きます。美観上はマイナスですね。無機質な空間の機能美ではこのようなまだらな色の存在は非常に目に付きます。

んで、優先席の場合です。だから何?と言う位に差異がない…。

ロングシート部分です。明確に仕切されたバケットシートによる2+3+2の7人掛は定員着席について効果があります。1人辺りの想定座面幅を450mmとし、わずかながら横幅にゆとりができています…でも近鉄のシリーズ21の横幅には当面敵うまい。ましてや営団5000系の想定横幅には言わずもがな…。

209系ベースのFRPカンチレバータイプロングシートですが、何が悪いって、まず決定的なのはランバー部分。その形状の悪さは座席の前後幅のロスに現れています。ランバーの飛び出し量が大きすぎ、かつ臀部の突っ込み量を無視した格好になっているので、壁面から1〜2cm程度の空間が無駄になっています。おまけに形状が悪すぎて、どうやればあれが腰にフィットするのか常々疑問です。

こちら、色違いの優先席部分です。優先席は車両によって割り当て位置が異なっています。

こちらは先頭車、運転席後ろすぐのロングシートです。定員4名…意外と見られないスタイルかも知れません。このお陰で、几帳面な車掌の定員着席放送では「2名・3名・4名・7名」と通勤電車らしくないバリエーションとバラエティ豊かな並びが聞けます…(笑)。

車端部の3人掛席です。製造メーカーによって、壁面に凹みの有無が分かれます。この壁面処理の下手さもかなりのモノです。消火器の設置されている反対側では、壁面は前を消火器、横を壁面でバッサリと仕切られており、何とも居心地の悪い区域になっています。

オールロングシートでも、JR西日本207系は消火器を車外に出して空間を最大限利用できるようにしていますね。これはこれで賛否両論あると思いますが…。

グリーン車は朝晩ラッシュの需要から2階建てを2両連結した迫力ある眺めになっています。特に、朝晩はグリーン席にも暗黙の指定席があるそうで、時たまイレギュラーな着席が発生するとその席の常連さんがあぶれるという皮肉も…。

グリーン車2階席です。従来の2階席では恒例だった読書灯が無くなり、スポット空調のみになっています。目新しい設備としては、215系で設置されたLED電光表示装置が挙げられます。

今のところ在来線2階建て車両に共通している問題ですが、2階へ上る(および階下へ下る)螺旋階段で視覚的にはデッキと遮断していますが、耳に残る高音のカットができていません。仕切扉がダメであれば階段部分の壁や階段ステップに薄いカーペット1枚張るだけでかなり違うのですが…。特に、ドア開閉チャイムがあまりに無神経な音量設定をしているだけにその思いは余計強いところです。

階段部分の照明も高さや形状に一工夫欲しいところです。長身の人であれば、ぶつかる場合も有り得ます。

こちら階下席。従来の階下席にはなかった読書灯がこちらに移ってきました。日中のほの暗さと眺望上のバランスを取る上で、まぁ納得できない設備ではありません。

2階席部分です。紫系統の回転油圧リクライニングシートがズラリと並んでいます。小糸工業製がメインですね。カンチレバー式の座席故、回転ペダルではなくE3系電車のようにアームレスト後端部に回転操作レバーを設置し、これを引き上げることで回転できるようにしています。

リクライニング量は乗車時間や普通列車用グリーンとしての程度を考慮すれば、取り立てて不満はありませんが、横幅の利用やセンターアームレストの形状には大いに不満の残るところです。横方向への張り出しや、ヘッドレスト形状の見直し、アームレストサイズのアップくらいはあっても良いと思います。

座面についても、従来のリクライニングシートとの座面高の差はありませんが、沈み込み量が確実に減少していること、座面中央部が妙に盛り上がる形状で、成田空港から逗子まで通しで乗ったときは結構な痛みが臀部(尾てい骨)に残りました。

こちら、写真は1階席のものですが、階下席も同様の色と形状の座席になっています。一般に、新しいリクライニングシートでは回転ペダルを踏むとリクライニングが解除されますが、この手のレバーが設置された座席では回転を開始してからリクライニングが戻るようになっているようです。

秋田新幹線の工事期間中、キハ110にこの座席を搭載した特急が走った時期がありました。その時に使用された座席も一部編成に転用されています。禁煙席については殆ど見分けができませんが、元・喫煙席については肘掛前部の金属プレートによる「フサギ」が広くなっているようです。一部ドア脇にセットされた座席については有効幅の関係で20mm狭めになっています。お時間があれば一度お探しアレ。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通2M-200181500mm(ボックス間)
グリーン2不明970mm