787系電車(普通車) 最終確認時期:2013年11月

九州に「つばめ」あり。今更語るまでもなく、名実共に日本を代表する名列車に冠を許される栄光の列車名、その姿は独特の造形の中にも気品すら漂わせています…と言ってみたり…実は登場当初、その顔を見てブルドックかと思ったのが私の貧相なセンスです(笑)。その後、回数見るとなかなかカッコいいことに気づきました。

787系普通席は長期に渡って投入されてきただけに、そのバリエーションは見かけよりマニアックに分かれています。1000mmのシートピッチ、必要にして充分な広さを持つ大型背面テーブル、ロール式カーテン、全席独立した読書灯…それらの中心に位置するのがこの1次車(前期)座席です。Tバーフットレストが新鮮なデザインの集約点でしょうか。

このころのフットレストは、脚から離れると後部カバーにぶつかりながら「ガシャン…」と減衰音を立てて戻ります。登場早々にテーブル脚が補強されています。そのせいか、少々テーブルを引き出しづらいというのは内緒にして置いてください(笑)。

そして前期座席を改良したのが1次車(後期)座席です。取り立てて差がないように見えますが、戻り位置が少し変わっています。その通りで、初期座席で出てきたフットレスト戻し時の騒音という不具合点を修正しています。この座席はシリーズを通してクッションが硬めという評価が大勢ですが…私はこのくらいが好みです。ハイ。

ただし、JCAS(旧・池田物産)が本格的に鉄道座席に殴り込みを掛てきた黎明期の逸品らしく、回転機構にはその未熟さ…というか詰めの甘さが残っています…それってのは…重いんです。これ。

787系はハットラック荷物棚を持っていますが、ここに収まりきらなかったり入りきらない大荷物の為に車両中央部には立派な荷物置場(ラゲージスペース)が設えられています。外見では、車両中央部の窓の無い区画がその場所になります。何事にも落とし穴があって、荷物固定用のベルトが振動で揺られ、なかなか盛大な騒音を出しているケースが多です。

この荷物棚の上のハットラックは業務用となっており、時たまパーツボックスが入っていたことも…。なお、混雑時になるとこのスペースに荷物の代わりに人が置かれているときもあります(笑)。誰もいないときに私も試してみたのですが、あれで博多〜西鹿児島を座り通すというのは江戸時代の重石拷問に迫るモノがあるかと思います。万が一、そのような境遇になったときのために敷物を持っていきましょう(本末転倒・早く並べや<自分)。

1次車(前期)の色違いバリエーションです。787系の普通席は色違い・パターン違いを入れると、その把握作業は文字通り「しらみ潰し」となります。私にはとてもできません(笑)。

787系が「かもめ」「にちりんシーガイア」に進出する際にジワリと増備されていますが、2次車以降に装備されたのがこの座席です。静かに戻るフットレスト、補強などが見苦しくない背面大型テーブル、向かい合わせ時に威力を発揮するインアームテーブル…ちょっと形状の変わったヘッドレスト等、熟成を重ねて求められるべきアーキテクチャを満たすようになりました。

同じ写真を載っけてナンですが…この普通席にも悲しい欠点があります。窓際床面に巨大なボックスが見えます。この中にはパイプが走っているのですが…そのために脚が伸ばしにくいです。高校の卒業旅行・大学時代の旅行で「ドリーム」運用にてお世話になったとき、実はどれだけ泣かされたでしょうか…。

そのため、長時間乗るときは窓側より両足が均等に伸ばせる通路側の方が都合がイイかも知れません。そう、まるで航空機のエコノミークラスのように…。

そして、2次車座席の色違い。インアームテーブルですが、マグネットとスプリングのお陰で、振動にもぶらつかず、しっかりアームレストにしがみついてくれます。便利と言えば便利、ただそのクセのある動作感は軽快と見るか妙に安っぽく見えるか好みが分かれそうです。

さらに色違い。どの色がどの座席と言う傾向はありませんが、一頃は指定席が比較的カラフルな座席で自由席は割とモノトーンな傾向がありました…が、今はバラバラです。良くも悪くも。

1次車の座席と2次車の座席ですが、外見はインアームテーブルとサイドアームレストの一部以外に取り立てて差異は見られませんが、座席自体の詰物と着座感にやや隔たりがあります。総じて2次車の座席の方が硬めでいながらホールド感が向上していると思います。1次車のランバー部は、ややスカスカな気があるように思えます。

2号車には車椅子対応座席がありますが、その区画にはこのような目隠し用の設備があります。折り畳み式のテーブル・ドリンクホルダーなどその姿勢に手抜きは見られません。ってか、他社も見習え(笑)。

博多〜熊本間は高速バス対策の割引切符や恵まれた特急本数で、利用者が増加。そのために「つばめ・有明」で時間2本体制だったのが「つばめ・有明・有明」と時間3本体制になりました。そこで、787系が更に増備されています。室内はその時に誕生したクロハの普通席部分全景です。通常、指定席に充当されている部分です。

指定席部分。座席自体は2次車分と差はありません。しかし、座席足下のパイプカバー部分にサービスコンセントが備えられており、携帯電話の充電でもモバイルコンピューティングも可能です。それまでの787系では、車両端部にのみ100Vコンセントがありませんでした(それも車内清掃用の掃除機のための…)。そのため、自由席では無条件でリクライニングが掛られるラゲージスペース直前の席と並び、騒音と振動の点でマイナスを持っているにも関わらずデッキ直前の席は(特に夜行列車で)大人気を博しています。

今更感全開のお蔵出しですが、787系の増結用100番台でも後の方になる115〜117番のみ、少し他の普通席と変わった設備を有しておりました。

一見、色調などが整った「大人の」787系然とした座席ですが、ヘッドレスト上端部分、いわゆる手すりの代わりにノンスリップラバーが貼り付けられている、座席的には異端者が居ます。

ただこの車両、なかなか連結されないので、出会えるかどうかは運任せという…。

飛んでこちら、都落ち感漂うメンテナンス状態で知られる宮崎周辺の編成。

一見、なんてこと無い普通席の光景なのですが、よく見ると窓側になにやらナチュラルに溶け込んでるように見せかけて、やっぱり変な物体が取り付けられています。

こっちにも。この妙にステージじみた、ボール半分のテーブル状のモノ、気になります。

どうもアームレスト先端の回転小テーブルが設置されていない、初期次数車に限った施工のようなのですが、南福岡方面では見掛けないところからして、こちらの地域専従車に施工されている感があります。

テーブルは窓間、高さはシートバックテーブルのそれとほぼ同じ高さになっています。

なので、両方使おうとすれば、ホラ。

しかしこれ、ミトーカパッケージからするとやや外れた感もありまして、どういう経緯で取り付けられたかは地味に謎パーツです。

多彩な輸送空間が提供されているこの形式。在来線列車では久々のビュッフェが復活していますが、その半室をコンパートメント席にしています。写真はその1次車の全景。

1次車のセミコンパート席の様子です。写真左側はテーブルを展開した状態にしています。ヨーロッパにおいては、コンパートメントが至極一般的な設備ですが、日本ではそれまでグリーン車・一部のジョイフルトレイン・リゾート向け列車などしかありませんでした。

当初、この区画はグループ利用を想定した指定席でしたが、利用率の低さと自由席の慢性的な混雑に対処するために自由席に変更され、また再び指定席に舞い戻ったりとなかなか流転な歩みを辿っています。特急=ロマンスシートというイメージが強い日本では、どうにも使い方に苦慮をするようです。座席自体はカンチレバー席(おそらくコンパン社パテント)が採用されており、その座り心地は意外にもしっくりとしたモノになっています。しかし、全面ガラス張りというのは賛否が分かれそうですね。

2次車以降でもコンパートメント席は増備されていますが、全景の狭さを軽減するためか、直接利用空間とは関係ない仕切ガラス上部を湾曲させて通路区間を広くさせています。

そのお陰か、1次車の壁の間をすり抜けるような感覚が和らいでいますね。

座席自体は1次車と大して変わりませんが、布地のパターンや彩度にやや変更が加えられています。全面ガラスだったのがプライバシー性をやや考慮しながらもコストダウンを図ったためか、肘掛より下あたりからスチールカバーに変更されています。

そして、その色違いバージョン。

最近の特急列車には授乳や気分が悪くなって横になりたい人のために多目的室が備えられています。787系ではこれを「マルチスペース」と定義し、このようなガラス張りの区画にしています。勿論、横引きカーテンがあり、万が一のプライバシーも保たれます…が、決してイケナイ使い方をしてはいけません。

ここの座席自体は、普通のベンチそのものでかなり硬めです。関東の方でしたら、山手線205系の6ドア車の座席を想定されるとイメージがあるかと…。要は、座席に溢れたからと言ってココを使うべきではない、と言うことなのです。尤も、普段はロックがかけられているようなのでそのつもりで。

トイレ洗面台です。なぜにここまで…という感じもしますが、長距離・長時間・夜行運転まで幅広く行うこの車両ならではの設備が備えられています。

洗面台右下(男女共用およびグリーン車の場合)、を引き下ろすと革張りのステップが出てきます。トイレの中で着替えを行う場合などを想定し、靴を脱げるようになっているのです。

787系を787系たらしめる重要な要素にビュッフェがあります。スーパーエッグドーム・木を多用したインテリア・それでいてメカニカルな内装・ムードある照明・綺麗なお姉様(笑)…扱う品物もドリンク類からお土産・記念品と多岐に渡り、列車の魅力を引き上げることに成功しています。

夜行運転時は勿論、営業時間外。備品撤収・照明も必要最小限…でも座席に付かれたら飲み物でも持ってここへ来てみると…いや、いい感じです。

逆サイドから眺めた様子です。ドリーム運用時にカウンター内に潜り込んで寝ている不埒物が居ますが…それはイケマセン。

セミコンパート席との仕切近くには自動販売機があるほかに、床面まで長く伸ばされたガラス窓があります。もの凄い迫力ですよ、これ。

2次車のビュッフェです。基本的な構造は1次車に準じていますが、カウンターと窓側にそれぞれ簡単なベンチが付けられています。新幹線のビュッフェが当初、イスがあって後に撤去されたことを思うと何故?と思わないでもないですが…軽食を取るときはこの方がいいのかも知れません。特に単線区間にはいると揺れることもありますし…。

セミコンパート席との仕切近くには自動販売機の代わりに衛星放送が受信可能なテレビセットが備えられています。しかし…そのCNNを見ていた人は殆ど居ませんでしたが…。ビュッフェには室内4カ所にBGM用のスピーカーがあります。1次車では穴だけ出ていて本体は隠れていますが、2次車では堂々と「BOSE」の文字が…。何ともアグレッシブな見栄えでは無いでしょうか?

そして、逆サイドから見た全景。やはりイスがあった方がにぎやかに見えますね。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通1付番無し1000mm
普通2付番無し1000mm