一畑5000系(しまねの木) 最終確認時期:2016年10月

♪この木何の木しまねの木…絶対言うと思ったでしょ(古)。

2編成ある5000系の片方を、島根県の県産品振興事業(with 結構な額の補助金)で大改造。「しまねの木」号としてリニューアルしました。

外観は一畑電車側の意向でそのまんま、ヘッドマークが変更された程度の差異に留まっています。でもね、改造担当はあの米子にある後藤工業からして、タダで済んでる訳ないよな、と期待するのがスジであり人情というものでしょう。

出雲市駅から乗って、松江方面の車両全景。

ドア間にいきなりズドンと何かがそびえ立ってますね、そして、吊革というか吊り輪がデッカくなって目立っています。

順を追って見ていきますので、出雲大社の参拝並に慌てず急がずお付き合い下さい。

出雲市側の方もパチリ。室内の造作配置が連結面から点対称になってるのが判ります。この辺は、以前の「出雲大社号」の配置を踏襲しています。

運転台直後の周辺。壁面は木、座席のソデ体も木。床面まで木目調なんですね。

ワンマン運転に対応した設えとなっており、運転席直後に料金箱が備え付けられています。乗務員扉も、停車駅毎に運賃収受に対応できるように改造されています。

「楯縫」では特等席が鎮座していた部分に、フツーのロングシート。

特にバケット改造等もされておらず、表地が緑色になっています。カラーコードは「楯縫」に準じたものと言えるのではないでしょうか。

大きなソデ体は、少々脇が開くかも知れませんが、概ね頼りがい満点です。

運転席後ろのガランとした空間は車いすスペース…だと思うでしょ。残念、それだけだと50点しか貰えません。というか、車いすマークが窓上の見えづらいところに貼ってあると言うのが…ね(苦笑)。

閑散時間帯、ここは自転車持ち込みスペースに化けています。310円/台でママチャリだってそのまんま、ドア開閉に支障が無ければ折り畳めなくてもOK。

と言う訳で、丁度地元のオジイサマがお持ち込みになってましたので、お許しを頂戴してその状態を撮ったのがこれ。手すりにはゴムロープが備え付けられていますが、車いす固定と言うより、どう見ても自転車固定に使いそうな感じでしたし…。

ドア脇のロングシートは、ソデ体こそ先ほどと同様に木質化改造されていますが、オーソドックスなそれのまんま…うん、隣のそそり立つ何かが気になりますが…。

車端部分もロングシートそのまんま。色こそ違えど京王時代の雰囲気がチラリチラリ。

ただ、総じて一畑が苦手なんだな、と感じるのは引き下ろしカーテンのメンテナンス。途中でガツリゴツリ引っ掛かるのが多い上に、壊れてるのも多々。

ススッと下りてこないのがあまりにも多くて正直閉口。

ドアはワンマン運転を前提とした乗り口・降り口のプレートが設置されています。

ドア上に吊革がない辺りは、朝晩の混雑時間帯といえど、そこまで切羽詰まってないという余裕のあらわれと言ったところでしょう。

さて、ドア間車両中央部に目をやると、旅客機上位クラスで最近のトレンドになっているパーテーションみたいなのがズラッと並んでいます。

このパーテーションも木質化されており、結構ガッシリとしています。毎度の様に撮影するとこんな有様でして…。

上の写真と何が違うか、よく見ればテーブルが展開されてるというところだけ…。

これでは座席がなんだかよく判りませんね…。裏を返せば、セパレータとしては抜群のパフォーマンスということなんですが。

クロスシート部分は、2&1配列のボックスシートとなっています。こちら1人掛サイド。

元々、転換クロスシートが設置されていた側になります。

座席間には折り畳みの小テーブルがあり、飲み物とお菓子位なら、丁度良いスペースです。なお、車内美化にご協力を。

ロングシートに面した側、背後に文字通り「衝立」がセットされて、形容しがたい安心感というかヒキコモリ感というか、落ち着き感があります。

背ズリを木というのは、どっかの赤いJRだと、誰かさんが座り心地をブチ壊しにしたことで定評ではありますね。どっこい、コチラはほどよい座面角度とクッション感、ランバーサポートの角度や張り出し、段付、ヘッドレスト高さなど、運賃のみという普通席カテゴリとしては非常にまとまった良い座席ではないかと思います。特に、ランバーとヘッドレスト間で、上手に段差が付けられていることから、ショルダーがうまくハマるようにできています。

贅沢を言えば窓側にもアームレストが欲しかったな、という位で、いや、これ正直にめくるめく感動って仕上がりではないでしょうか。

2人掛と1人掛、後に詳述するとおりで座り心地が全く違うのですが、個人的にはこっちに軍配。

さて、背ズリをパイプでガッチリ留めた固定ボックス席だな〜、と見ると、座席趣味者なら気付くべき違和感があるんですね。

1人掛席をよーく見てみると、座面下に固定クロス席にはあり得ない設えがチラリ。転換クロスシートのアーム受け台があるんですよ。オマケに、背ズリの脇に転換クロスシート特有のアームも残ってるんです。

そのまさか…でして、出雲大社号時代の転換クロスシートがベースとなり、ソデ体や背ズリが木質化されてるだけなんですね、これ。

では、2人掛×2の4人ボックス席を見てみましょう…って、こっちも衝立のお陰で凄く個室居酒屋的な感があります。グループで乗るには、文字通りのうってつけ。

画像では見えづらいのですが、この衝立、縁のトコロに角が取れた長方形のくぼみが彫り込まれています。握り手と解釈するか、将来的に座席番号でもシールで貼り付けて座席指定車として運用できる様にしているか…うん、後者だな(笑)。ただ、製造コストの兼ね合いか、座席側(内側)にも同様のへこみが付けられています。

テーブルは、通路側にパタンと展開できるようになっており、ペットボトルを想定したくぼみが4つ。

クロスシート区画ですが、各車両とも2人用と4人用がそれぞれ3ボックスずつ、都合6ボックスあります。

窓割りの良否は、使い方や日射に対するカーテンの使い勝手に依存することから、利用する人の時間帯やスタイルにより左右されますが、眺望を主として均整が保たれているのは中央のボックスで、丁度真ん中に窓が1枚。

前後のボックスは、視線に窓枠が多少カブりますが、日射に合わせて自前の勢力範囲(笑)でカーテンを差配できる点はポイントになるでしょう。

2人掛席を前面から見てみるとこんな感じ。やはり背ズリは衝立からのパイプで固定されています。窓側を見るとアームレストがあるんですね、こちらは。

反対側を見ても概ね造作は同じ。

中央のテーブルが折り畳みになっていることで、出入りへの動線にも配慮されていることが判ります。また、テーブルを支持している脚も、丁度2人掛の境界線上に置かれており、不特定多数が座り合わせた際の配慮も見え隠れ。

「出雲大社号」時代の2人掛は、小田急NSE発生品の回転クロスシートを使っていました。だいぶお歳の座席なので、いよいよ命脈尽きたかと思ったら早計。

コチラの区画をよく見ると、座面下フレームが今時のクロスシートでは見られない張り出し方、言い方を変えれば座面前端が慎ましいんですね(今時の座面はフレームよりも舌先が伸びて作られているのが基本)。その下を見ると、固定クロスシートでは使わないはずの回転台座パーツのなれの果てがチラリ。コレを見た後、自身が2002年に撮影した出雲大社号の座席フレーム部分とまじまじ見比べてしまいましたさ。

背ズリは木質化されており、ソデ体も交換されてますが、なんだかんだでちゃんと生きてるんですよ、NSEシートのフレーム。

座り心地については、クッションもしっかり交換されており、以前より改善されてますが、背ズリ角度が少し立ち気味で、座面がバケットになっていないことから、お尻から腰回りの食い付きに不足感があります。そういう意味で2人ボックス席の方が座ってて楽かな、と。

衝立のシート間に相当する部分には、このような「穴」があります。これ、荷物入れだそうですが…うん、これ気付けってのはムリ(笑)。

荷物入れを意味するカバンマークとか穴の上に貼る位しないと気付かれない。その上、サイズが小さいので、旅行者が使うカバンやキャリーケースは得てして入らないという、発想は正しいけど作り込みが実に惜しい。

背ズリ間にはスリットの入れられた板が渡されています。

以前、ここは下にある荷物入れまでストンと入っていたようですが、段を付けて取り出しやすくした…らしい。

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