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1:旅客車工学概論
副 題:鉄道車両の車体デザインとアコモデーション設計
著 者:松沢 浩(編)
発行者:レールウェー・システム・リサーチ
発行年:1986年
頁 数:376ページ
価 格:3200円
鉄道車両の構造から材質、そしてアコモデーション・座席に至るまで基礎的な部分を詳細にかつ過去の実施例を豊富な写真画像を元に記述している。一般の人が閲覧できる資料の中ではおそらく唯一かつバイブル的な本。中には様々な鉄道工学書で図面のみ登場していた試作座席(RX-5/7/9)も登場している。
座席の他にも、トイレや洗面台などの水回りのメンテナンスの苦労談や寸法の取り方、旅客流動などにも言及がなされ、鉄道車両の車内を趣味とするならば一度は目を通しておくべきと考える。ただし、残念なことに絶版・出版社も解散した模様で、一般市中での入手は不可能。私が知るだけで国立国会図書館、東京都中央図書館に納本されている。

2:快適さを測る
副 題:その心理・行動・生理的影響の評価
著 者:鈴木 浩明
発行者:日本出版サービス
発行年:1999年
頁 数:185ページ
価 格:2100円
このサイト、一般に「快適」と呼ばれる車両についても「快適」と書いている稿は少ないと自分では思っている。快適と言っても、あくまでも己の主観であることをサイトのトップで断っているのは他でもなくこの書籍に対し、共感する部分が多くあることからと考えている。
鉄道総合技術研究所の人間工学部門で、鉄道車内での快適指標の研究をしている筆者故、内容は相当に技術系である。しかし、快適と言う語の位置付けについて、そもそも快適という概念を整理するためにページの相当数を割いているところからして、この分野の初学者や私のような理系ドッチラケ人間でも読み込める本であるし、改めて快適の追求の重要性と難しさを思い知らされる。
私にもし理系方向の素養があったら…きっとこの世界に進んでいたでしょうね(と、同時にそれはこの業界が停滞・退化すると言うウワサが…)。実は、衛生管理者の副読本としても使えることに最近気付いた。

3:建築・室内・人間工学
副 題:
著 者:小原二郎・内田祥哉・宇野英隆(編)
発行者:鹿島出版会
発行年:1969年
頁 数:260ページ
価 格:3600円
鉄道座席を語るなら、「小原二郎」という名前は知らなくてはならない(と勝手に思っているだけで別に知らなくても問題なし… ^^;)と言う位、近代鉄道座席の方向性に重大な影響を持つキーマンが執筆・編者として参加している1冊。国鉄末期に立て続けに現れた名座席群はこの研究結果が反映されていると言っても過言ではない。
基本的に、家を設計する際のレイアウトの基本の基本書みたいなもので、人間工学に基づいて各部位・各動作の適切寸法や、マテリアルの使い分けについて書かれている本であるが、読む前と読んだ後ではアコモデーションの見方がガラリと変わる…訳ではないモノの、普段知覚していることが具体的ワードによって当てはめられて、改めて実感できるという点では名著。
この世界では古典のような本らしく(単に各版毎の印刷部数が少ないと言う可能性も)、私が購入した時点で当代取って第20版。スゲェ…。

4:回想の旅客車(上・下)
副 題:特ロ・ハネ・こだまの時代
著 者:星 晃
発行者:交友社 再販分は学習研究社・刊
発行年:1985年 (2008年・再販)
頁 数:179ページ(上)/172ページ(下)
価 格:2500円(上)/2400円(下) 再販分は各巻とも3990円
戦後の「国鉄」が最も「国鉄らしい」、優美で流麗な車両を次々と世に放った時代があった(そうです…何せ、私もリアルタイムの人間ではありません)時、その名車群の設計を行った筆者が書き記した記録であり、今後の展望であり、貴重な記録であり、資料である。改造展望車・進駐軍専用車・151系電車・20系客車・157系電車・「ひので/きぼう」…その設計の考え方と実際の流れについて、豊富な写真と共に書きつづられている。
特に展望1等車の改造については詳細に記されており、日本最初のリクライニングシートにも触れられている。この現物は、現在、JR東日本大井工場構内のマイテ39に手ひどく痛んだ状態ながら辛うじて存在している。座席のモケットは兎も角、骨組み自体は完品で揃っていたので、サビを落として(略)は可能である。一刻も早い保全処理がなされることは重要なのであるが…。
この書籍は既に絶版となっているので、今は古書店を走り回るしか入手に関して打つ手がない。私も手に入れるのにはかなり苦労しました。

5:星さんの鉄道昔ばなし
副 題:
著 者:星 晃・米山淳一
発行者:JTB
発行年:2004年
頁 数:196ページ
価 格:1000円
「回想の旅客車」入手難の今、星晃氏のいわば「発言録」とも言える対談形式の本。時代を築いた車両の数々について、その設計意図や思い入れなどが伝わってくる。アコモデーション関係記事についてはこれまたなかなか細かいところにチョイチョイ…と補足・言及されており、その当時の考え方を知る上でも参考になる。書籍本体については、価格もお手ごろなので取っ付き易いかな。
「ものには理由(わけ)がある」と言う持論と、次々と時宜を得つつも先進的にして意欲的なパッケージを生み出し続けた根元には、後に工業デザインとされる考え方と氏の経験に基づく「造り方を作る」が表れていると言える。

6:ぼくは「つばめ」のデザイナー
副 題:九州新幹線800系誕生秘話
著 者:水戸岡鋭治
発行者:講談社
発行年:2004年
頁 数:162ページ
価 格:1200円
言わずもがな、今のJR九州を片っ端からデザインしてきたデザイナーによる回顧録とその考え方がつづられた本。800系「つばめ」に辿り着くまでの作品の数々や、787系「つばめ」における過程など、工業デザイナーからさらに進めた「デザイナー」領域の人が鉄道車両に入ってくる苦労がしのばれる。
さて、筆者は車両デザインではこともあろうに「座席」に力点を置いて設計しているとの事…そうですか…あの座席で力点ですか、とは多分にして座席趣味人のつぶやきであって、普通の人にはそれで充分なのかも知れない。いや、やはり何だかんだ言って「個性的」なデザインを実現するには、それ相応の技術と開発力と(隠れた不具合の)カバー力といった総合力も験されるものと私は信じて疑っていない。
イラストや図面も多く盛り込まれており、子供でも取っつきやすい1冊、いや曲解すれば私のような「大きなお友達」を狙い撃ちにしているとも言える(殴)。書中の線画の数々が結構そそる(笑)。

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