85系気動車 最終確認時期:2007年11月

電車以上の気動車、と言った感のある東海の85系気動車。「南紀」に投入されたとき、線路を改良せずに所要時間を40分近く短縮した…などの伝説を残し、JR東海の在来線活性化の嚆矢になりました。

展望車前面、最前列を取れば迫力ある眺めが楽しめます。さり気なく運転席上に見える天窓にワイドビューの意地を感じます(笑)。

「ひだ・赤」仕様の普通席全景。天井のラインを直線をイメージに、パッと見での新幹線に近づけた風合いはJR東海の車両に共通したデザインセンスです。デッキ仕切扉上の情報提供装置は新幹線100系譲りの形状です。

「ひだ・青」仕様の普通席全景。当初は先述の赤と交互に連結されていました。

こちら、「南紀」仕様車の普通席全景。座席色以外は「ひだ」仕様車と殆ど差がありません。細かく言えば、先程のデッキ仕切扉上の情報提供装置の形がそれまでの新幹線100系タイプから横長の新幹線300系に通じるデザインに変更されています。

その他、全般的にモノトーンな感じになりました。この辺のデザインセンスは383系電車普通席に通じていますね。

「ひだ・赤」仕様の普通席(CR59A)です。派手で大きめのチェック柄と背面のバックシェルが目を引きます。普通車でシートピッチ1000mmの大台をデフォルトにしたのはこの車両です。リクライニング角度も多めに確保され、大きな窓と相まって掛値なしの「ワイドビュー」が実現しています。

この車両が座席列部分に限りハイデッキ構造(床面+20cm)になっているのはよく知られていますが、その床面、意識されているかどうかは別としてカーペット敷です。モノトーンで言われなければ気付かない向きもありますが、さり気ないゴージャスを感じます。この辺はJR東海が得意な点ですよねぇ…他は知らんけど(殴)。

「ひだ・青」仕様の普通席(CR59A)です。赤に比べて、こちらの方が角度や程度の差とは言え、経年のくすみは避けられないようです。なるほど、N700普通席のケバ青はこの経験からですね(違)。

フットレストがラチェットで固定できるようになっています。赤仕様も固定でき「る」のがデフォルトなのですが、最近はメンテナンスをお手抜きしているのか、この固定装置が壊れてもそのままにされている子が居ます。東海もちょっとタガが緩んでませんかね?

こちらは「南紀」仕様の普通席(CR64)。座席フレーム自体は「ひだ」仕様とほぼ同じですが、バックシェルを止め、カラーリングも落ち着いたグレーを基調にしています。座面自体は比較的長時間の着座(CR59で名古屋-富山往復・CR64で名古屋-新宮往復共に体験済)にも耐えられるようです。

「南紀」仕様でも普通席床面はカーペット敷きです。スゲェ、と言うかエライというか…。

交通バリアフリー法の施行は、大なり小なり鉄道車両アコモデーションに影響を及ぼしています。在来車両についても努力義務と言うことになっていますが、施策の1つ1つに社会的影響(と責任)がついて回るのは巨大企業・JRの宿命ですね。そのため、在来施設・在来車両についても改善は順次行っているようです。まぁ、先日何処からかお叱りがあったようですが…(苦笑)。

この形式の車両では、普通席車の一部について8名分の区画を使い、車椅子対応トイレ・車椅子対応洗面台・車椅子対応座席とドドンと改造を施しています。車椅子寄りつきの関係で、ハイデッキは無し。前後にかなりのゆとりを持たせた1人掛席(CR72)を配しています。しかし、冷静に見ると…この前後幅はスゲェですよ、2席分の窓で1席なんですから空間贅沢度で言ったらグリーン席以上と思われます。

だから、ね、壁面部分のフットレストユニットの延長長さが歪だとか、何だか見た目がやっつけ仕事的だ、とかよい子は言っちゃダメですよ(殴)。

こちら全展開状態。テーブル…手が届きません。フットレスト…これはまぁ何とか…。

さて、またCR59Aかと思えば、それは早計というもの。登場当初、第一陣に設置されていたのがこのCR59型座席です。

わざわざ型番を分けるにはやはり事情があるわけでして、先述のCR59Aに比すると、座面の長さが少し長めになっていました。座ブトン下の台座部分が少し薄造りになっているのも違いですね。

そして、これがハッキリとした差。フットレストの板面形状が異なっています。CR59の方がガッチリしたモノになっており、北近畿タンゴ鉄道KTR001形のフットレストに通じる風合いを感じます。

こちらがよく見られるCR59Aのフットレスト板面。カーブ主体のスマートな形状となっています。この形式に限らず、JR東海全般において、普通席でフットレストを装備する様々な車両でよく見られるタイプです。

「南紀」仕様車の窓間座席には、窓キセを渡すように、このような小テーブルがセットされています。

大窓一面を横目に向き合いさせる場合、向かい合わせした時に窓キセがテーブル代わりにできますが、この部分が来るとそうも行きません。こういうスキの無さが(イイ意味での)東海なんですよね。尚、膝を上げると角度によってガツン!と当たる悲劇が起こるのは、目を瞑って良いのでしょうか(反語解釈にて)。

車椅子対応トイレ。その設えはETR500(ユーロスターイタリア)のトイレ並みの威圧を感じます(笑)。JR東日本や九州にもこのような円筒状車椅子対応トイレはありますが、ここまで威圧感バリバリでは無いような気もします。

車椅子対応洗面台がトイレの反対側に。こちらは至って平均的というか常識的というか…結構イイ感じの大きさで優れていると思われます。

85系気動車登場当初のグリーン席は半室、2&2の4列という仕様でした。独特の3つ目ガラス仕切扉や、普通車との精一杯の格差付けとも取れる風合いの差が「グリーンなのかな?」と思わせるに過ぎません。

しかし、横4列というボリュームは今となっては見劣りするほか何物でもありません。「南紀」から3列席グリーンが退き「ひだ」編成に組み入れられるようになってしまっている今、この設備の存在意義は何のためか非常に悩ましいところです。

ちなみに、ちょっと昔に撮った方。よく見るとソデ体前端に灰皿を塞いだ痕が見えます。上の写真にはありません。地味なお手当であります。

これがそのCR37です。シートバックテーブル・インアームテーブルを持ち、適度なリクライニング角度とフットレスト…と通り一遍の設備は持っています。フットレストは角度が固定されており、裏面は板面のみならずフットレストのフレーム全面に布を回してゆったりと脚が置けるようになっています。

しかし、フォルム全体に見られる華奢な印象と通路幅に遠慮したスレスレ感は、今時のグリーンの料金に見合うビューでは無さそうです。メーカーは小糸工業ですが、悪いのは…メーカーじゃないんですよね。ちなみに、同社のプロモーションビデオにはこの座席が登場したことがあります(何!?)。

さて、3列車があることで低く見られる同設備ですが、4列グリーン席という括りで見れば、今なおかなり上位に位置する雰囲気を持っていると言えます。まぁ、センターアームレストが短いとか、その辺言い出すとキリはないのですが…。

デッキ部分です。窓は開くようになっており、どうも車掌が利用する業務用スペースと言った感じです。

そして、JR東海の真打ちグリーン席とも言える「南紀」仕様車です。現在「南紀」からグリーン車は撤退しており、「ひだ」の高山・富山側先頭車に連結されています。「ひだ」仕様と明らかに違う1&2配列の広大な空間がそこにあります。

1人掛グリーン席(CR40)です。シートピッチ1250mmは在来線特急屈指(最長ではない)の長さとなっており、大きな座席でもその空間の広さが実感できます。元々、南紀方面へのフルムーン層を当て込んだのですが、このピッチではターゲットのフルムーン層が使い切れるかどうか疑問が残るほどです。

これが全展開状態の1人掛席。リクライニングをフルに倒した状態では身長170cm台の人ですらフットレストまでキチンと脚が届くか心配されるほどの空間です。

オーディオサービスと大きな窓、読書灯と典型的てんこ盛りなサービスは、後の新造特急車を見るところからJR東海唯一にして、おそらく造ってからも「しまった、やりすぎた!」と思ったに違いありません(笑)。

しかし、1両まるまるグリーンというのは「ひだ」運用なら兎も角「南紀」時代としたら少々供給過剰だったかも知れません。これが仮にキロハであったら…もう少し運命は変わっていたことでしょう。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通(ひだ用)2CR59/59A1000mm
普通(ひだ用)1CR72----mm
普通(南紀用)2CR641000mm
グリーン(ひだ用)2CR371160mm
グリーン(南紀用)1CR401250mm
グリーン(南紀用)2CR411250mm