E231系電車(グリーン車) 最終確認時期:2004年8月

過去、グリーン車・グリーン料金制度について研究論文を出したことがありました。普通車とグリーン車の利用者の間で、グリーン料金に関する意識差・価値観の相違があったのは確かなところではあります。今となってはお恥ずかしいレベルにつき、内容は一部の方を除いてご勘弁なのですが…。

その途上、某路線グリーン車内でアンケートを行ったことがあります(許可を得ての上)。そのフリーアンサー欄の中に「他各線にも(グリーンを)連結して欲しい」と言う意見が多かったのは印象的でした。

宇都宮・高崎線のE231系、湘南新宿ライン投入系統を中心に2004年・秋からついにグリーン車が連結されるようになります。夏の「お披露目営業」で、無料グリーン体験をされた方も多いのではなかったでしょうか?

在来線の寸法上、ダブルデッカーグリーン車設計は初代近郊サロダブルデッカー車・サロ212・213が基本であり、この時点で定員や動線についてはある種の完成域に達していました。その後の車両については全てこの車両に準じた造りになっています。

勿論、空調やその他艤装の細かい部分については時代に即した進化が成されているわけですが…。

デッキ出入口については、半自動ボタンを中心に手すりを若干増設した程度に留まっています。しかし、見た目地味〜に幅が広がっているような気もしますが…計ってないのでパス。

2階席からデッキに向けて階段を見下ろしたアングルです。各段に鮮やかな色のステップを用い、段目が判りやすくなっています。

この部分、かねてより壁面に薄いマット内張を施せば、デッキからの不快音が軽減されると思っているのですが、そこまでを期待するのは無理な注文なのでしょうか…?

先に非客室設備から。まずは洗面台です。白を基調とした化粧板により、清潔なイメージが貫かれています。

この洗面台、私思うにもう少し排水側を下ろし、全体的に深めに作れないモノかと思う時があります。水はねの問題もありますが、手を洗う場合に両拳をしっかり摺り合わせて洗う動作において、少々深みが足りないように思えてなりません(ひいては、これが水ハネの遠因ともなる)。

さらに、蛇口側もほんの少し手前側に水流の軸線が来る様にし、結果的として水が跳ね返る際に蛇口水栓側に向かうようにした方が…と思うこと多々。

次にトイレ。客室との仕切は折戸、この扉が開けられた時には寸法的に干渉します。

本体は真空吸引式、線路に対してナナメ設置です。限られた空間で取り回し上の最大効率を狙ったものですね。しかしながら、洗浄スイッチは少々固め設定で、高齢者は操作に難儀しそうな予感がします。

さて、やっと客室です。まずは2階席側。白系統で貫かれた化粧板に対し、ブルーのランダムパターンモケットが鮮やかです。

照明はカバー付きの直接照明、読書灯・スポット空調などは特に見当たりませんね。

照明窓側にSuicaリーダースポット兼・検札ポイントビーコン(笑)が有り、空調風洞はその脇にあるスリットから出ています。そのため、冷風・温風共に着座している状態でじんわり効いてくる感じです。

車両両端の平屋部分。こちらは普通席と面した3列ある側です。この区画にのみ、荷棚があります。大荷物のある方はこちらを使う方が賢いでしょう。

普通車との仕切扉、こちら側は化粧シールが貼られていますが、その向こう側は無機質極まりない地のむき出しです。ああ、判りやすい格差構造(笑)。

この引き戸については、山手線E231や東西線直通用E231-800で見られる重力式半自動機構(要はドアレールが閉まる側に傾斜している)が入っています。

こちら、洗面台などと面するグリーン車同志の連結側、ブロンズガラスにスリットで空調的連続性に配慮が計られています。

定員8名のちょっとした個室感覚。人数が合えばここを使ってささやかに盛り上がるのも悪くはありません。

階下席、2階建て車両の2階は何か何かと盛り上がる・騒がれる傾向があります。階下席は「違いの判る」人向けの落ち着いた空間といえるでしょう。

天井は2階席の関係で極めてフラットに、眺望の代償としてか読書灯がセットされています。

またしても2階席ですが、よく見ると座席が微妙に異なります。手すりが手すりらしく出っ張ったモノと、このような滑り止めマットになっているもので、印象がかくも異なります。

平屋席の光景。うん…やっぱりイメージが違いますね。機能差は無視するとして、滑り止めシートの色が化粧板に合っているので、ライン的連続性を感じます。

それでは、座席本体へ。こちらは天龍工業製のバージョン、YR215形です。E257系に端を発する新デザイン系列座席のパターンです。

ソデ体は新規設計品ですが、近似デザインは新幹線E3系後期増備座席のそれについて、カドを丸くしたスタイルです。座面チルト&スライド機構は省略されていますが…。

この座席、総じてリクライング時のガス圧が強め設定になっています。スピーディーに清掃作業をする上で要求されたスペックなのでしょう。

階下席のYR215です。モケット色が変わっている以外は、取り立てて差異はありません。

このポジションの場合、車両裾絞り形状の関係で、窓側が少々狭々した印象を受けます。脚部が1本脚なので、それなりのクリアランスが確保されているのは有難いところですが…。

ヘッドレスト後部、テーブル上の白いピンは収納式の上着掛(帽子掛)です。フック形状になっており、荷物棚が無い両階席において、ささやかに役立つでしょう。

そして、平屋席へ。センターアームレストはそれまである程度浸透していた幅広タイプではなく、その前までの標準的な細身のものになりました。あまり評判が良くなかったんですかね?

テーブルは水平より気持ち前傾しています。これはこれが所定スペックなのでしょうか?おそらくは盤面水平が原則だと思っているのですが…。

ビン・カン転倒時の悲劇度合いを考えれば、向こう側に倒れることで座席と衣服本体への悲劇が起こる可能性が減る、とすればアリでしょうが、ちょっと別の意味で不安を感じる角度です。

端部の座席には、このような折りたたみテーブルがセットされています。

メーカーは変わって、こちら小糸工業製のバージョン。座席本体に大きな差異はありませんが、手すりがJR西日本700系B編成に見られる滑り止めシート(ノンスリップレザー)になっています。

当初、メーカー差異と観測されましたが、どうやら投入過程に伴って仕様が変更されたようです。

新製車・新系列にして、ここまで判りやすい仕様変更がなされるのは異例では無かろうかと思います。元々の投入スペックは、こちらのノンスリップレザーであり、今後は順次先般掲出した手摺り付きの方に切り替えられるとのこと。

この仕様変更があり得る要素とは…「清掃時の座席回転(ただ回すだけなら手摺りの方がそりゃぁ掴みやすいですね、リネン交換は昔ほどストイックになされませんから)」が絡んでいるのでは無かろうかと思われます。

しかし、この仕様変更の真相は薮の中…。

平屋席部分です。2階席・階下席は2席分で1枚窓、途中に桟を入れて、カーテンが動くようにしていますが、平屋部分は各個独立して窓枠があり、カーテンが使えるようになっています。

そして階下席。余談ですが、この窓枠下の木目調化粧板、NEXグリーン個室の内装板と色調・模様共にかなり近似のものです。あちらは木目らしい模様がしっかり入っていますが…(笑)。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
グリーン2YR215(天龍工業製)970mm
グリーン2不詳(小糸工業製)970mm