E353系電車 最終確認時期:2018年2月

JR東日本、JR化後の第一世代特急車の世代交代が進んでいますね。中央線では第三世代に相当する車体傾斜タイプのE353系。お顔は誰が言ったかウォーズマン。

E351で感じられた走行中の微振動はほぼ解消され、その点の乗り心地は確実に向上しました。が、カーブで振り倒されるような不快な横Gが強く残ります。この辺はJR四国の8600系電車と同じ評価でしょうか。伝え聞くに車体傾斜量やタイミングなどのチューニングで腐心したそうですが、根本的な構造の違いということでしょうね。

普通車全景は、デザインで意図された清涼感・透明感をカラーリングと色配置で見せるようになってる感はします。E7(W7)系新幹線車両もそうでしたが、天井・中間・床面で明度変化を層に、中間をイメージカラーで彩るのが奥山デザインのデザインコードなんでしょうね。

普通席はE657系普通席をベースに、細部でかなり仕様変更されたものとなっています。目に付くところでヘッドレストや握手周りがE7(W7)系普通席やJR西日本で主となったヒラタケ状になり、アームレストの黒めカバーで包まれた形状、表地の色配置など、横目のシルエットは総合的にE7(W7)系の普通席(WRK257G1)テイストとなっています。

アームレスト間の有効幅が450mmでセンターアームレスト幅58mm、サイドアームレスト幅40mm程度。センターアームレストが長めに取られ、両座席間のセパレート性の意図を担っています。この辺、一頃の「センターアームレストは控えめに作る」のと逆の考え方が潮流になったんだな、という感があります。

サイドアームレスト長はE657系普通席より短めになり、アームレストヘッド部にリクライニングレバーが仕込まれたことでこの部分だけわずかに幅が膨れています(逆説的に考えれば、背ズリ・ランバーの有効幅を精一杯絞り出すための工夫とも言う)。

掛け心地ですが、普通席チャネルとして堅め基調であり、背ズリの薄さによる頼りなさは残りますが、精一杯取ったであろうショルダーラインの横幅、ヘッドレストピローと併せておおむね正常進化した感じです。

車端部の座席は仕様が少々異なっています。

基本的な設備は変わらないのですが、ソデ体基部にAC100Vコンセントのお顔が出ています。この形式だと、基本的に前席後部カバー部分にコンセントがあるのですが、進行方向が逆になった場合、車端席は壁面にコンセントがないので代償措置ですね。進行方向向きだと、コンセントの口が増えることになるのでラッキー?

E657系だと、サイドアームレスト前端にコンセントがあったのですが、使わない人にとっちゃ指先のノイズジャムですし、万一濡れた手で掛けた場合にもしも…の可能性が拭えないなぁ、と思っていたこと、また作り手とすると余計な配線コストやその後のメンテなど、そういうバランスもあったんじゃないかな?

コンセント位置は、グリーン車等の上位クラスも含めて鉄道会社により試行錯誤の段階であり、決定版や今後のスタンダードと呼べるのはまだ見当たりませんが、個人的にはこのソデ体基部への仕込みが一番無難じゃないかと感じます。前席設置形は、通路出入りなどでどうしても引っ掛かるリスクが強く、やらかす方もやらかされる方も双方幸せになれないこと、そして、やはり靴先が当たる高さに手を差し延べるのは生理的抵抗感が残ります。

ただ、ソデ体基部もパーフェクトと言いがたいのは、コードが通路側にベロンと飛び出ると通行人や車販カートに支障し、コンセントヘッド形状やサイズによっては挿入できない可能性が残る、という点が悩ましいところです。コンセントの口を枕木向きではなく高速バスで見られるようになった、レール向きに設置すればかなりファインになると思いますけど。採用した会社さんが出たらご報告を(笑)。

普通席のイレギュラー区画シリーズ。

車いす対応席の直前列、前席の背面テーブルが使えないため、センターアームレスト部分がフルセパレートとなり、インアームテーブルが両席分収納されています。逆向きだと、背面テーブルとどちらを使おうか嬉しい悲鳴状態?

車いす対応の1人掛席。

背面テーブルが省略され、代わりに折り畳みのドリンクホルダーが2席分設置されて、背面下半分がなかなか賑々しい感。

ここで追加的に書くと、普通席では高速バスなどで見られるタイプの個別空調吹出口があり、その脇に普通列車グリーン席などで見当たったランプユニットが設置されています。いずれ「あずさ」系統は全席指定にでもする目論見があるんでしょうかね。

壁面設置のテーブルはなかなか大形盤面ですが、少し手が届きづらいかもしれません。

川重コンポ設計製造の車いす対応座席、肘掛の跳上可動部分の造作が無骨というか、一昔前の超合金ロボット的な関節構造で、肘を置くと違和感がバリバリなのは難点です。デザイン全般との絡みはあるんでしょうけど、この辺は小糸とか天龍だったらもうちょっとナチュラルな仕組みで作ってくるんじゃないかなぁ、と思ってみたりします。

編成内、普通席であれば1,3,5,7,10,12号車の松本側に荷物置場が設置され、スーツケース等の大荷物でも対応できるようになりました。

バーや固定バンドの雰囲気からしてスノーボードの板なども対応できそうですね、早い者勝ちですが。

グリーン車です。下り方向の全景では、手前側に車いす対応座席があることで、入口からは少し広めに見えます。

天井照明は、LEDタイプ共々普通車と同仕様の模様ですが、天井のカラーが作用するのか、色温度がやや低めに感じられるようになっています。

テーマカラーが赤系統であり、ランバー下部や座面のグレーが対照色としてコントラストが取られています。

上り方向の全景。前の画像でもそうでしたが、グリーン席の仕切扉は普通席のような素通しガラスではないこと、また扉の中央にはグリーンマークが小さく掲出されています。

荷棚下には、普通席同様に空調の吹出口はありますが、例のランプ装置はありません。

グリーン席は、背ズリの上半分が深めの立ち上がりで、ナナメからうっかり見ると塩沢とき的ヘアシルエットを想起しちゃう世代です。

リクライニング量も普通席より多め、座面がしゃくれ上がるように連動します。R11以降、国鉄タイプのグリーン席で連綿とあった座面連動で、それらと機構は異なりますがリクライニング感を得るとともに、腰回りを落ち着けるようにしています。車体傾斜方式では上体の方が振り回される形になることも想定されたか、ヘッドレストピローからショルダー、ランバーに掛けて全般的に深めのバケット形状となっています。着座感はやや硬めの部類です。

センターアームレストの形状、E657系のグリーン席以外でもどこかで見たなぁ…と思ったのですが、そうそう。イギリスのヒースロー・エクスプレス1等座席のアームレストが、まさにこの形状(無論、同じパーツじゃありませんが)でした。

趣味誌で本形式の図面を見ると、普通席とグリーン席では通路幅に100mmの差があります。勿論グリーン席の方が1席当たり25mm分広いことになるのですが、どこに差が付いているかと言えば、アームレスト間の有効幅が実測値で15〜20mm、センターアームレストが約20mm程度広くなっており、ここに還元されています。つまり、両サイドのアームレスト幅は普通席と同じ、もっと言えば普通席とグリーン席はソデ体形状が一緒。こういうのってこの形式もそうでしたよね?あっちは座席というかあまりの駄席なので、暗黒のB面が発動しましたが…。サイドアームレストについては、普通席との差違として肘を置く部分にフェイクレザーカバーによるクッションがあるだけ。

正直、183系DX編成を知る身からすると、パフォーマンスとしては嬉しくないグリーン席感があります。座席の機能や造作とは別問題として、やはりグリーン席は小手先技でどうこうするのではなく応分のカネで、それなりのゆとり感が欲しいですね。

車いす対応席の前席に当たる列では、座席回転時に備え、センターアームレストにインアームテーブルが仕込まれたユニットがあります。

上り方向を想定して、背面テーブルとインアームテーブルを同時展開してみましたが、高さや干渉度合いから、どちらを選ぶかはその日の手回り品次第で選べるのが良くも悪くも悩ましいところです。また、地味ながら練られてるなと思うのは、背面のフックと折り畳みのドリンクホルダーが車いす対応席を除いて点対称位置に設置されてる点。それぞれの荷物が干渉しないようになっています。

先の標準席でもそうですが、この座席の表地は織りと起毛の関係で光の当たり方次第で、なかなか苦心したであろう背面成形の凹凸がよく判ります。ともすればテカり方にエロティシズム。

車いす対応の1人掛席。松本側最後尾列、揺れが少ない車体中央に位置することもあり、ピンで乗る場合は上り方向でココを宛がわれるのが最もラッキーと呼べるかも。勿論、事前指定は一定のタイミングによるブロック解放を待つことになります。

座席自体が窓側から少し離れて設置されており、前席のT字フットレストを使うには少し難が出ます(ということは、下り方向で前列の人も多分にアレだよね)。また、普通席のそれと同様にアームレストの意匠がいささかゴチャゴチャしてスマートさに欠けるきらいが残ります。

この形式のグリーン席は基本的に1160mmピッチで配置されますが、固定器具や乗り移りのスペース確保の意図があるのか他席より後ろに寄ってます。そのため、台座設置上は1160mmながら背面間ピッチでは実測1200mm程度と他列よりピッチが広めになります。そういう視点で見ると、やはりここが一番のアタリ席扱いか…。

全展開の図。E351系の1人掛席では通路から離れていることを背景として、ヘッドレスト上の握り手が省略されていましたが、この形式では設置されていますね。

また、座席個々別々の設定誤差かも知れませんが、座面のスイングスライド量が多めになっている感じがします。

JR東海N700系で知られるようになった、背面テーブルの盤面スライド。

これは結構便利ですよね、あまり知られていない隠れ機能のように見えることも多々ですが。

グリーン席の大形荷物置場は、松本側の仕切扉を出た脇に埋め込まれているような空間が宛がわれています。

普通席と異なって客室外設置となっており、客席数に対する容積という点でスペースもあまりありません。2段構成で、やはりスキー板などを想定した可動バーなどが設えられています。

ドアから入り、グリーン客室へ向けての通路アプローチ。配置は手前から両側に乗務員室、次いで右側に多目的室、左側に車販準備室と並び、右側奥に先の荷物置場があります。

グリーンに割り当てられた車両の半分をこのような業務用設備で仕切るの、ないし埋めるのがE657系以降のJR東日本の設計文法なんでしょうね。そのワリで4列席になっていると思うと、過ぎた合理性に少々割り切れない感が残ります。

乗降ドアを境に乗務員室の反対側には、車いす対応の多目的トイレがドーンと控えています。10号車にある普通席車いす座席からと挟み合うように設置されていますね。

その奥、普通席側には男性小用トイレが控えています。

乗降ドアは各車両統一で横幅935mm、標準的な車いすが通行できる幅を確保しています。

窓の形状や化粧板などは奥山デザインコードと思われる客室外配置色なのでしょう、最近の車両にあるあるな色配置になっています。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通1不明(川重コンポ製)960mm
普通2不明(川重コンポ製)960mm
グリーン1不明(川重コンポ製)1200mm(実測値)
グリーン2不明(川重コンポ製)1160mm