E653系電車(「いなほ」仕様) 最終確認時期:2015年10月

常磐線から羽越線への華麗なトラバーユ、先代の485系に倣っての(?)転属で第2の勤務地を得たE653系ですが、外観は誰が言ったかフルーツ牛乳あるいは関西で言うミックスジュースの如きカラーリング。夕陽と波が織りなす幻想は、それだけで旅客を日本海の荒波と共にどこかに連れて行ってしまいそうです。

その一方、新潟発・村上行きの「快速らくらくトレイン」では、長らく定着していた開放グリーンについて、グリーン車が1両独立したことでサクッと終了という割と現実的な一面も織りなしています。

普通席は、基本的にリフレッシュ程度の手入れとなっており、座席のカラーリング以外に大きな差異は見受けられません。

シートの柄は沿線名産の「小千谷ちぢみ」をモチーフとしている由。

車椅子対応の1人掛席も健在。秋田方面では、壁面最後尾列に当たることで人気席ですが、これまた指定できるのはとあるタイミング以降となります。

シートピッチはこれまた変化なく910mmのまま。常磐線と異なり、一部のデラックス改造車以外とシートピッチが同じであること、座席下がそれなりに空間となっていることから、比較的スンナリだったようです。

2人掛席もやはりシート表地を変えただけ、程度の差異に留まっています。

強いて言えば、バックシェルヘッドレスト部分に整理券・特急券を差しておくチケットホルダーが追加されている程度でしょうか。取り忘れにはご注意を。

さて、転属しての最大の変化は先述したグリーン車の設定です。

元々、同車は輸送力補完のために普通席のみで企画・設計・製造されており、グリーン席は改造によって登場した「格上げ」となります。新潟から乗って、秋田・酒田方向の先頭1号車に設定されています。

ドアを開けてパッと広がる巨大座席と1&2配列という、JR東日本の最近のデフレ劣化グリーン席と見かけ上に限れば真反対の設えに驚きと共に、懐かしさがこみ上げてくるのは年代のせいですかね(殴)。

新潟向きになると、ドアを開けると巨大な衝立がコンニチハ。

デッキ仕切扉が、元々かなり開放的なスルーガラスだったため、目線を合わさせないようにすることと、着席時の落ち着きに配慮しているとも言えます。

こうしてみると、各席毎に衝立が立てられており、プチ個室的な空間になっていることが覗えます。

デッキから入った場合の視覚的な開放感はあまり見当たりません。これで通路側を軽く仕切ったら、もの凄いプライベート空間化しちゃいます。その点で、ここだけに「限れば」グランクラスも割りとメじゃないかも。

まずは1人掛席から。シートピッチは、910mm2列分の空間を衝立で仕切っていることから都合1820mmとして便宜的に扱います。

全般的にオーバーサイズの背面と座面長から、レッグレスト・フットレストが欲しいところですが特に設定されて居らず、着座後の足がダラリと行き場に困ってしまいます。所要時間も結構長い路線なので、何とかして欲しいナ、と。

E4のグリーン席にあるようなオットマンでも置いておけば良かったのに…。

リクライニングとテーブルを全展開するとこんな感じ。

ウレシイ意味でオーバースペースを授かっておきながら、座席の掛け心地については、ここ最近の座席の中でもトップクラスに酷い仕上がりです。

ランバーサポートがほぼ見込めない形状で、適切なS字カーブを描けておらず、クッションはバウンスもコシも見当たらない平板同然のシロモノ。ヘッドレストは上下調節できるものの、フィッティング性が悪く、置き場に悩む位です。

シートバックが高重心な上、シートリクライナやフレームの剛性が極めて脆弱なため、ちょっと腰掛けるだけで座面がグラッと後ろ反りします。その座面も角度がやや足りない上、ヒップポイントがドコにあるのか判らない有様で、鬱血感が伴います。

これら悪条件が揃ってしまったが故、背面がグラグラで非常に不安定感を催すという、一から十まで悪設計極まった「グリーン料金返せ」級の仕上がりです。とあるグルメ漫画に乗じて「この座席を設計したのは誰だぁっ!!(雄山調)」と叫んで暖簾を吹っ飛ばしたいくらい。

2人掛の方になると、さらに不可解感全開の設えが見えてきます。

リクライニングレバーは、それぞれ通路側のアームレストの下方に牛タンの如き形状で見えております。クリック感は良いのですが、素材が静電気でパチッと行くタイプのもの。人体でリクライニングレバーを操作する手指先は、もっと鋭敏な場所。そこがダイレクトに当たる場所でこれは褒められません。まさにイタズラガムを引っ張るようなもの。

アームレスト前の造形はインアームテーブルを受けるためとはいえ、全く以て形状が不明。列車の揺れでヘタにここへチョップの憂き目になったら青タン確実でしょう。アームレスト造形全般も、なんでこんなブロックナイズさせるのか意味不明。前から後ろまで完全水平など、正直正気の設計とは思えません。各部をバラバラに設計し、ブロックのように組み合わせる考え方なのでしょうが、デザイン性を無視してコストを浮かせたい意図しか感じられない醜悪さ。

テーブルは、中央寄りのアームレスト内に収納されていますが、このフタも何故だか自分側ではなく、相手席側がカパッと開く様になっています。これ、人間の肱先関節の可動範囲からして、どう考えても逆にすべきであり、ここまで滅茶苦茶な動線設計を考案した奴は誰だ、と憤りさえ憶えます。

チョイとナナメ撮り。最近のグリーン席ではお約束のACコンセントですが、1人掛席はともかく2人掛席はセンターアームレストとなるソデ体フレーム前面に1穴。左右どちらかの席しか使えないようになっています。何故、両脇のソデ体に都合2穴設置しなかったのか、もうワケ解らん…。

そのACコンセントも、差し込み部のヘッドがソデ体部材とツラ位置に出ておらず少し引っ込んでいることから、コンセント形状によってはしっかり刺さらない危険性を孕んだ上、コンセントのアタマを少し回転させながら差さないとホールドされない操作性の悪さが光るユーザビリティの悪さ。

ストロボ撮りをしているので、ソデ体のプラスチッキーな光沢がチラチラしますが、あまりお上品とは言えないカラーリングです。床面カーペットもそうで、色あわせのアプローチは悪くないのですが、素材の安っぽさでスポイルしている悲しさ。

ここ最近の東日本の程度が下がる一方のグリーン席に対し、一石を投じる設えだっただけに期待を寄せたいところですが、企画・設計のどちらが悪いのか、ここまで座席として酷い仕上がりになってしまったのは珍しいところ。JR九州800系以来の失望感全開で延々新潟〜秋田間を乗り通したことも(苦笑)。

日本海側の眺めは良いし、在来線特急の中でも車内販売が気を吐いている貴重な区間だったりするので、余計惜しさが際立ちます。

秋田向きの最前列はデッキに面することになりますが、壁面処理の関係で他席より足下空間がさらに広くなっています。

あとトドメで、シートバック裏のウッドシェル。デザイン上の処理だとしても意味不明。剛性に何ら寄与していないし…強いて言えばシートリクライナの補強?

普通席側デッキとの間には1ブロック分をフリースペースとしています。

フリースペースですが、グリーン車内にあることから自動的にグリーン客のための設備、ということが理解されます。コチラが山側。

こちらは日本海側。ただ、午後になると全面日射に晒されますので悩ましいですネ。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通1不明(JCAS製)910mm
普通2不明(JCAS製)910mm
グリーン1不明1820mm
グリーン2不明1820mm