24系客車(A1個室・シングルDX) 最終確認時期:2005年11月

車両自体はまだ東海道系統のブルートレインで乗ることができますが…、やはり折角の長時間乗車では奮発ですね。

「北斗星」「トワイライトエクスプレス」の様なタイプの寝台が出る前において、普通の人が利用できる最上級設備に位置した車両です。私の小学校入学前、親の出張帰りを出迎えに行ったとき、「はやぶさ」連結のこの車両を見たときからの憧れ設備でありました。

「出雲」編成において、A寝台は余計な通り抜けを防ぐために電源車の次に連結されています。細身の折ドアから入ると、そこには積み重なった時代を感じる「A寝台」のプレート。

通路側の脇の窓は、車掌の閉扉等確認用のもの。さらによく見ると、入口には段差があります。これは後ほど…。

ドアは客室側に折戸。防音を意識したものであり、なかなか重くできています。

客室側から。通路側窓の引き下ろしカーテンは目の細かい(遮光性の高い)引き下ろしカーテン。窓下にあるのは…?

靴ブラシ等々…この車両のそもそものターゲットがよく判る設えです。こういうところにさり気ない「走るホテル」の残照を感じ取れます。悲しいかな、ホテルの接頭語に「シティ・リゾート」ではなく「ビジネス」が転んでくるように思えてしまうようになったのは、生活水準の変化とも言えます。

続いて通路側、所々に非常脱出時に使う窓割り用ハンマーが備え付けられています。ちゃんと封印紙も貼ってあり、使われた形跡は無いようです(あっても困る)。

通路はちょっと殺風景な内装板・グリーンが鮮やかな遮光カーテン・モノトーンなカーペット・そして木目に時代を感じる各個室の扉…。

今でこそ個室寝台は珍しい設備ではなくなったのですが、昭和40・50年代を思うと、この空間へ立ち入る緊張感は段違いのものだったでしょう。

通路を通り抜けて一気に電源車側へ。扉を開けてすぐに冷水器があります。JR西日本「銀河」開放A寝台車にあったそれと同じタイプです。今や貴重品ですね。

さて、走行中なら気付くのですがこのデッキ相当区画と客室区画、何となく音が違うのです。それもそのはず。画像の様に、客室部分は通常より底上げを行い、防音・吸音に配慮しているのです。先の入口デッキ部分も同様。

しかし、これがアダとなり、寝ボケまなこでトイレに行って戻ろうものなら段差でスッ転ぶ危険性も否定できません。それ故の床色違いの明確化、ということもあるのですが…。

電源車側ドン詰まり。

いよいよ個室へ入ってゆきます。

長年の憧れ(苦笑)が今、ここに…。今となっては個室前後幅115mm・寝台幅70cmと来ればB個室「ソロ」と何が違うの?と言われてしまいそうですが、設計当時の国鉄的設備概念縛りと空間とのせめぎ合いを垣間見られる非常に貴重な空間です。

早速手を入れてみます。窓側の肘掛を下ろしただけ?いえいえ、よく見ると…。

こちらがデフォルト状態。

肘掛を下ろすと背面が連動し、下部が前方に迫り出るようになっています。機構自体は十分頷けるのでありますが、如何せんここのポジションを味わおうとするとどうしても足下が洗面台で狭々してしまいます。

故に、笑えないのですがどこぞの横臥裸婦の如き体勢でゴロンとなるしか無いという…。

普通に寝台に腰掛て前方には鏡・コップ・AC100Vコンセント・蛍光灯…ここが身だしなみを整えるエリアであることが十分すぎるほど伝わってきます。

今やこのコンセント、本来の目的(電動髭剃り)で使う人が何人居るやら?なのですが。

部屋に入ってすぐの壁面にはこのように冷暖房調整用のダイヤル・読書灯・室内照明制御用のパネルがあります。

個室扉の上には荷物棚がセット。これ、結構頑丈に造られていますが、決してぶら下がったりしてはイケナイと思います(笑)。

何気なく先ほどの洗面台上にある蛍光灯…装飾と蛍光灯ユニットの収納・配線隠しの関係もあるのでしょうが、飾り板が渡されています。

さて、A1個室としてのステイタスというか象徴として「洗顔・身だしなみが個室内で完結できる(除くトイレ)」が背景に透けて見えます。それがこの洗面台を主役とする各ユニット。

向こう側から洗面台(兼デスク)・小物置き・コップ・ゴミ箱(蓋付き)・ペーパータオル・灰皿…とよくもまぁこれだけ詰め込みました、と言わんばかりの陣容。

洗面台はこの大きなフタを開けると出てきます。サイズこそコンパクトの極みですが、冷水・温水共にしっかり出る上に小型石鹸まで備わっている本格派。

少々残念なのはこの排水口が外界(と言うか外気)直結で、開けると冷たい空気とレールジョイント音がズカバカ聞こえてきます。フタを閉めると静かなのですから、このフタの防音性能はなかなかしっかりしたものだと思います。

洗面ができるできないを除くと、B個室との格差は何なんだ?となりますが、285系サンライズエクスプレス登場までは「A個室=個室内で完全起立ができる」これもあったでしょう。いわばタテ断面をフルに使える余裕。

この写真を見ての通りで、天井一杯までが己の占有空間です。使い切れるかどうかは別として、閉塞感が無いのはさすがです。尤も、前後には…ですが。

小物置場周辺。よく見るとこの灰皿のフタ、凝ってます(というか、旧世代優等列車に付いていた灰皿そのまま)。近郊形列車などでよく見られた回転フタでパタン…というレベルではありません。

ゴミ箱も先ほど書いたとおり、フタはバネで口がカバーされるようになっています。いわゆる「余計なもの」を見えないようにする心配りが見られます。

A個室の客になると、このように車掌が改札ついでにルームキーとタオルを配ってまわります。ルームキーは下車駅前で回収されますが、タオルはそのまま使うも良し、記念品とするのも良し。

さて、ベッドの下からはこのような転落防止ストッパーが出てきます。B寝台でも見られるので、さして珍しいものではないですが、寝台の端との妙な間隔が気になりませんか?

その種明かし。ここから3枚は終点前に車掌にお断りし、空き個室で撮らせていただいたカットです。勿論、寝台セット面には触らないように撮影しております。

さて、これが通常の寝台状態。寝台幅は先述の通り70cmとなっており、B寝台と同水準…いくら「個室」が価値のメインと言ってもA寝台でこれはちょっと寂しいですね。

演出上、転落防止ストッパーを先に展開します。勿論、この次の動作を先に行っても支障はありませんが…。

寝台下に妙なレバーがあります。これを手前に持ってきて「うりゃぁ!」と引き下ろすと、何と寝台面が手前側にググッと迫り出てきます。

これが本来の寝台フル展開状態になります。壁面からの寝台幅は+10cmの80cmとなりました(笑)。よく見ると、奥の方では洗面台のユニットとピタッと合わさっています。なるほど、あの微妙な幅はこれのためだったんですね。

足元灯・寝台迫り出しレバーをちょっとしたライティングで撮影。この手前側には通路にあったような非常脱出用のハンマーも収納されています。

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