200系電車(普通席) 最終確認時期:2002年8月

「ひかりは西へ」「やまびこは北へ」…知っている人も少なくなったキャンペーンフレーズです。東北各県が待ちこがれた東北新幹線開業時に投入され、今でも大所帯の200系車両と言えば反射的に出てくる座席が(せり出し式)自在腰掛のD21です。

写真の物こそモケット交換を受けていますが、リクライニングレバーを引いてわずかにせり出す座布団とそれに引きずられるように傾斜する背ズリのコンビネーション、背面テーブルと動作機構部カバーを兼ねた分厚い背面カバーによる狭い足下は決して居住性の良いモノとは言えません。

D21はこの環境からあまり良い評価を受けていませんが、しっかり座ってみると背面設計の良さを感じられます。悪いのは妙に割り切った背ズリの狭さと次の3人掛席に見られる回転不可ブロックの存在です。

3人掛席のD31です。このシリーズはその多くが日本リクライニングシート(日本発条・ニッパツ)製です。勿論、小糸工業で製造されたロットも存在します。

さて、この席はシートピッチの関係(と、重量的な側面も無視できず)で回転が不可能になっています。そのため、車内の2/5程度の人が進行方向と後ろ向きになってしまっていました。まして、シートピッチ980mmと言っても、その分厚い背面カバーのお陰でA席に座った人が通路へ出づらいと言うイメージを際だたせていました。

この座席のリクライニング機構は大変珍しい「無段階メカニカルロックリクライニング機構」を持っています。国鉄時代のリクライングシートの多くで、バネを動作メカに持っている場合、角度を固定させるのに段を付けるのが普通です。本品はバネの締付によるロックを咬ませることで事実上の無段階リクライニングを実現しています。ラチェットっぽさはありますが、うーん、ちょっと違うよね。そのため、ロックをかけてずれる遊びが極めて少ない(事実上0)物になっています。

そんな評判の芳しくないD21にも改善の波がやってきました。質実剛健(?)が信条の国鉄設計らしく、フレームは頑丈なのですが、ヘッドレストがボリューム的にちょっと寂しいです。この背ズリの詰物を厚くして、ヘッドレストも形状を今風の物に変えた物です。併せて背ズリ・座ブトンも弱めにバケット形状になりました。

座り心地ですが…う〜ん、ヘッドレストはちょっと…ですね。この部分については前の方が良かったような気がします。それ以外では座面のホールド性は向上している位です。まぁ、見た目はかなり変わりましたね。

そして、3人掛のD31の改造バージョンです。

200系は妙な新造車や改造車が多い系列です。シャークノーズの2000番台は100系をベースに東北新幹線としての装備を盛り込んだバージョンです。この車両には後述のダブルデッカー車両が連結されるなど「北の100系」を背負ったエース編成として活躍した時期もありました。

座席自体は2人掛がR53、3人掛が写真のようなR70と100系X編成と変わらないアコモデーションです。勿論、シートピッチも1040mmと東北新幹線普通席では最大級となっています。この車両は主として仙台止まりの「やまびこ」あるいは「なすの」など停車駅が多い鈍足便に回されることとなりました。2階建て車両のマークがあればこの車両が編成の両端にいるので、時間が合えば狙ってみるのもイイでしょう。

2004年夏時点ではH編成は既に引退しています。しかし、一時期だけE1系のリニューアルに伴う不足編成充当として復活し、運転されました。

東海道・山陽新幹線は100系の投入によって0系の活躍が減少している頃、東北新幹線は依然として200系の独壇場という日々が続きました。そのため、アコモデーション的な格差は広がる一方、利用者からのクレームも少なくなかったことでしょう。

そこで、平成元年から100系並の着座環境を実現する為、2000番台が連結された編成を中心に、主に指定席区画から新設計のR62へと改座を開始しています。併せて、シートバックテーブルについては戻し動作の簡略化を狙ってラッチ式に変更されています。

3人掛席についてもR71への改座が行われました。このR71、D31が設置されていたシートピッチ980mmで3人席回転ができるように、座席両脇のソデ体はそのままに真ん中の座席部分だけを回転させるようになっています。そのため、通路側のソデ体を見ると両側にリクライニングレバーがあるというちょっと変わった逸品です。

型番と細部こそ若干違いますが、JR西日本の0系R編成にもこの系統の座席が取り付けられています。

その代わりと言う感じですが、回転スペース確保の関係で回転させた直後の背ズリは垂直を通り越してマイナス方向になってしまう「逆リクライニング」状態になっています。E2系なども同様の座席ですが、この座席の厳しいところは座っても背ズリが想定デフォルト角に復帰しないことです。そのため、リクライニング操作に慣れない高齢者やあまり利用しない人を中心に修行席の如きサービスになってしまいました。

こちら、ビュッフェがある半室普通席の車椅子対応ブロックのR62です。右側座席のソデ体には車椅子固定用の器具が収納されています。

長野冬季五輪に(必死の思いで)合わせて開通した長野新幹線、会期中はE2系だけで運用が足りなかったことから200系を改造した長野新幹線対応編成が登場しています。F80編成がその対象編成になり、抑速ブレーキ・複周波数対応工事がなされました。

同時進行でE2との格差を埋めるためか、車内リフレッシュの練習台の様な感じの座席が装備されました。写真は2人掛席のもの。カラーリングこそR62・71のノーマルカラーリングですが、座席そのものはE2普通席の初期形とそっくり(テーブル付け位置などが異なるので別形式と見られる)です。

こちら、3人掛席の1パターン目。ソデ体など、基本的な形状はこれまたE2普通席初期形に通じています。この座席については、背ズリ角度こそマイナス方向で固定されますが、着座時点で想定デフォルト角に復帰するタイプです。

そして、これがF80編成に唯一(?)設置されていると言われている日本リクライニングシート製の3人掛席です。この区画のみ、座席回転スペースの関係から左右の幅を限界まで詰める必要があるため、肘掛・ソデ体が何とも形容しがたい形状になっています。

勿論、座布団と背ズリの接点部分も丸見え。座席フェチ的には面白いのですが、カタギの人からすればちょっと落ち着かない座席になります。

3人掛席の回転光景です。こうしてみると判るのですが、3人掛の真ん中部分(B席)は回転半径に引っ掛かるので、デフォルト時点では座面が一段へこんでいます。勿論、着座時には他の席と同じように復帰します。

E3・E4系と、新型車両が次々投入される中、当面使用する200系はリニューアル工事が行われました。その施工車の中でもリニューアル前に改座されている場合の車内です。

デッキ仕切扉上にはLED情報提供装置が、全体の見付はE4系のコードに準じた物になっています。これだけではパッと見は新車同然です。

リフレッシュを受けながらもキッチリ残存しているR62です。

そして、こちらはリニューアル後のR71です。モケットの雰囲気がガラリと変わりました。

そして、車椅子対応セクションです。

こちらは元々D21・D31が設置されていた車両のリニューアル後です。工事に合わせて座席も変更されています。座席以外の見付は先述の車両に準じます。

但し、車両端部のそれぞれ4列分だけ、座席回転スペースの関係でシートピッチが1〜2cm程度動かされています。そのため、大した物ではありませんが、端部は進行方向次第で少々窓割りがずれているような感じになります。

2人掛席です。E4と同様の座面スライド機構併用回転油圧リクライニングシート(長い!)が取り付けられています。JCASが製造を受け持った座席になります。

こちら3人掛の方。見ての通りで、B席の座面だけがガクンとへこんでいます。

2階建て車両が連結されている場合、2階部分はグリーン席、1階部分にはグリーン個室と写真のような普通席(セミコンパートメント)があります。リクライニング機構などは特段ありませんが、グループで利用する際は狙ってみるのもイイでしょう。勿論、指定席です。

かつて、この部分の利用促進を狙って特別に割引商品がありましたが、エース列車から外されて久しい今、ここを使う人はかなり少ないようです。「土・日きっぷ」「三連休パス」については4人同時使用で利用できるかどうかは不明です(使えるとそれはそれで面白いですけどね)。

普通席ではありませんが、200系と言えばビュッフェを外してはイケナイでしょう。東北新幹線では直接営業を休止したとはいえ、車内販売基地としてビュッフェ車両を連結した編成がまだそれなりにいます。

自由席が混雑している運用では、ここが自由席難民の避難先の一つになっています。カウンター上にはデジタル表示の速度計がまぶしいです。上越新幹線では200系ながら275km/h運転を行っていた列車がありました(今は…あるの?)。対象運用に乗ったときは必ずココを見に行っていました(笑)。

盛岡・新潟側には普通席との仕切になっており、カード式の公衆電話と時計があります。

カウンター脇、速度計の下には冷水器が控えています。

そして、窓側カウンターの東京・上野側には手洗い用の蛇口があります。軽食を摂って、指先が汚れた場合(あるいは食べる前…も)にちょっと洗うための設備と言ったところでしょう。

通常、カウンターで何か飲食するときは景色を見ながらなので気づかれていないですが、引き下ろし式のカーテンがあります。柄は国鉄時代にありがちなパターンです。

車内販売の主役、ワゴンです。今でこそ軽快なデザインのワゴンが幅を効かせていますが、これは開業当初からの備品の様です。どの会社が入っても良いように黄色いバンドの部分には営業各社の名前が入っています。

私の記憶が確かならば、このワゴンは主として弁当とお茶・コーヒーに的を絞って販売用途に就いたものなのですが…車販などで業務に就かれた方で、ご記憶のある方、是非教えてください。

洗面台の三面鏡です。リニューアルが施され、センサー式の自動水栓になっています。

電話コーナーです。最新鋭の車両でも電話コーナーは残っていますが、ここまで明確に独立しているのは数少なくなりました。

時たま、ここの中で携帯電話で会話している人を見かけます。何か間違ってるような…。

デッキ部分の冷水器です。リニューアル時に撤去されており、かなり貴重品になりました。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通(初期形)2D21980mm
普通(初期形)3D31980mm
普通(改座)2R62980mm
普通(改座)3R71980mm
普通(改座)2不明(YR094類似)980mm
普通(改座)3不明(YR095類似)980mm
普通(リニューアル)2R62980mm
普通(リニューアル)3R71980mm
普通(リニューアル)2不明980mm(一部970mm)
普通(リニューアル)3不明980mm(一部970mm)