E1系電車 最終確認時期:2002年8月

全車両2階建て構成、何とも特徴あるフェイスが取り柄(?)の車両です。フランス国鉄はこの車両の登場を契機にTGVデュプレクスの開発を行ったとか…。

その自由席は「とにかく詰め込み(超意訳)」を貫いた3&3配列の回転クロスシートです。通勤輸送需要が強かった頃の車両とはいえ、今時の新幹線でリクライニングを真っ向から否定するその割り切りに驚きです。

どうひっくり返っても横幅の拡大に望みの薄い日本の鉄道シーンで、せめて前後に有効に使いたいささやかな願望を叩き潰してしまうあたりに感動すら憶えます(笑)。編成増や増発ではなく1両辺りの収容力を極限に高める手法の走る辺りスゴイです。

そして、この座席は冬季のスキー列車などでは堂々と「指定席」として運用されています。いやぁ、実に素晴らしい。

一応、閑散時は真ん中の席の中程から肘掛を出して使えるようになっていますが、この高野豆腐の如き方形をして「肘掛」…前衛芸術家でも真っ青のセンスに映ることでしょう。通常面のモケット汚れ具合との対比に、おおよそ使われている素振りすら見せていないところがこの設備の日陰ぶり…というか意味の無さを物語っています。

こんな座席ですが、シートピッチは一応980mm。東日本の新幹線としては標準ラインです。

こちら、貫通扉から入ってすぐの3人掛席に付けられているカップホルダーです。階段と仕切扉の関係で一部はこのようになっていますが…さて、このカップホルダー、誰が使うのでしょうか…?

答えはこの列車が反対方向に進むとき、通路側の席の人にはテーブルが回ってこないための設備です。しかし、さらし者だわ…こりゃ。

さて、こちら自由席の階下席部分です。さすがにこちらはリクライニングシートが備わっています。座席自体は全体的に薄造りとなっています。シートバックテーブルの形状には特徴があり、つまみを操作して、テーブル部分を手前に倒し、そこから天板を引っ張り上げる形になっていますが…何故今更このようなスタイルに?

従来のシートバックテーブルから無理に変える必然性を感じません。強いて挙げるとするならば、テーブル天板を前後に多少スライドできるので体格に合わせた利用が可能…と。うわ、意味ねぇ(笑)。

その座席ですが、まさに「寸法との勝負」の様相を呈した座席となっています。このデザインがいかなる機能美から導き出されたものか、私には全く理解できません。文字通り肘しか置けない肘掛と蹴っ飛ばしたら折れそうなソデ体(よい子は蹴ってはイケマセン)…う〜ん。

こちら3人掛席。しかし、見れば見るほど背ズリの立ち方が堪りません。元々、200系普通車のD21が980mmピッチで設置されたところに、座席回転への需要が高まり、苦肉の策でサイドアームレストを固定して座席部分だけを回転させるR71が開発されたことがあります。

しかし、それをして「980mmでもやればできる」という全く本末転倒な発想が導き出されたとしか思えないところから、この垂直背ズリは作られたと言っても過言ではありません。

普通席のノーマルデッキ部分には座席配置の関係で2&2配置の部分があり、そこから飛び出る形で仕切扉と相対する1席部分にはキチンとテーブルが出し入れするための「バリケード」(笑)があります。

グリーン席にも同様のものがあるのですが、JR九州787系のそれとは異なり、視線をカットすると言う発想は全く見られません。この割り切り方はまさに(ネガティブに)ポリシーでしょう。

試作車(量産先行の方が適切か…)の指定席部分2階席です。基本構造は自由席階下席同じ座席でモケットの質を変えたものになっています。

指定席部分の階下席です。階下席特有の沈んだ雰囲気を感じないのは、車両が大きい新幹線車両だからかもしれません。

試作車階下指定席部分です。一般的な普通車設備としてはオーディオユニットが付属しているなど、破格の設備になっています。背ズリも厚めの仕様になっていますが…話では、ここの座席には東武鉄道100系よろしくヘッドレストにスピーカーが内蔵されているとか…。

そのあおりか、両端部が強調されすぎて寸法よりどうにも狭く感じます。

こちら3人席。こうしてみると、普通車についてはそのアコモデーションを利用者が想定するモチベーション別に4種類・3段階の暗黙の区分けを行っていると読みとれます。

曰く「1階・階下席<2階席」そして、料金負担の観点から「自由席<指定席」です。自由階下席と指定2階席のモチベーションがほぼ同等であり、指定階下席は料金負担に対する眺望分の価値を考慮してオーディオユニットを設置したと言うことになります。

一見、合理的に見えますし、この車両が登場した当時の自由席主体だった企画商品や新幹線通勤需要を考慮すると解らないでもありませんが、企画商品の多くが指定席主体となり、朝晩は普通車全車両が事実上の自由席となる現状を鑑みると、その振り分けは徒労と見えてしまいます。

更に言えば、オーディオユニットがあったところで、イヤホーン単体を持ち込む人はごく少数です。更に、最近のポータブルプレイヤーは制御リモコンの関係で単純なプラグ形状をしている商品の方が珍しく、設備による顧客誘引力は0と言っても過言ではありません(そのためのスピーカー仕込みがあると言えばそうなる…)。

恐らく、この車両を設計した時点で「何か2階席より装備付けなきゃ、みんな引くよね」という苦悶はあったんでしょう。

量産車の2階指定席部分です。カラーが鮮やかな緑となり、背面の縁取り処理などがスッキリしています。試作車のそれより、背ズリの厚みや角度・形状が改善されています。

そして、3人掛席。

階下指定席部分です。オーディオユニットは無くなり、モケットの質も形状も風合いも変わっています。以前のモノはどうしても汚れやすかったように思えますし…。バランスを取るためか、2階席と階下席では座席配置が左右で逆になっています。

そして3人掛席です。

グリーン席です。大型かつ重厚な座席が並んでいます。それまでの新幹線座席と趣を異にしているのは全面的にモケットを貼っている部分です。この部分は車椅子での利用を想定した区画になっており、この座席の1つ後ろについてはアームレストが手前に開き、乗り移りが容易にできる設計になっています。さすがは小糸工業製。

シートピッチは1160mm、グリーン車標準と言えばグリーン車標準です。

こちら2人掛席です。新幹線グリーン席では最大級と言われる横幅を確保し、居住性の向上に貢献しています。フットレストはTバー形状ですが、裏面反転できるようになっています。しかし、一般的に裏面反転できる側は土足禁止にも関わらず明らかに汚れています。原因は簡単、座席の生地色と床面カーペットのカラーコードに差が見られないためです。

誤認しやすい色環境と、あまりに小さい板面形状は、情報伝達の考え方として手落ちと言われても仕方ないでしょう。言うなれば、デザイン先行、使い勝手への配慮が不足している悪例かも知れません。

9号車27・28のA・D席にセットされているその車椅子対応1人掛座席です。しかし、この写真のような展開状態を見るとどうしてもクリオネを思い出してしまいます。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通(自由・2F)3不明980mm
普通(自由・階下)2不明980mm
普通(自由・階下)3不明980mm
普通(指定・試作・2F)2不明980mm
普通(指定・試作・2F)3不明980mm
普通(指定・試作・階下)2不明980mm
普通(指定・試作・階下)3不明980mm
普通(指定・量産・2F)2不明980mm
普通(指定・量産・2F)3不明980mm
普通(指定・量産・階下)2不明980mm
普通(指定・量産・階下)3不明980mm
グリーン(試作)1不明1160mm
グリーン(試作)2不明1160mm
グリーン(量産)1不明1160mm
グリーン(量産)2不明1160mm