E3系電車(現美新幹線) 最終確認時期:2016年6月

秋田新幹線からお役御免になった編成が、上越へ戦場を移しました。それも、ヤの字顔負けのド迫力な真っ黒車体で。

ヘタにぶつけたら、降りてくる乗務員からどんな示談の条件を切り出されるか、想像するだけでヒヤヒヤものです(冗)。

いや、実際はよーく見ると僅かに紺が混ざってるんですよ、光の当たり方や加減もあるのでしょうが。

北陸新幹線開業により、需要というかプレゼンスが何となく薄れた感のある越後湯沢〜新潟間を活性化するための「イロモノ」列車、外も中もゲージツ作品を詰め込んだ「現美新幹線」。

エクステリアのカラーリングやデザインもさることながら、デビュー早々、新幹線運行システムの一部をツブしちゃうお茶目な破壊力も持ち合わせていたことで変に名前が知られてしまったとか(これは単に身内がドジだったってことか)。

土日を中心として、今のところ1日3往復。2016年6月までパックツアー枠と指定席、2016年7月からは指定席と自由席になるところですが、後述の通り、自由席はヤメといた方がイイと思うんだけどなぁ、と。

まずは東京側11号車、松本尚氏のデザイン。元はグリーン席ですが、普通席扱いとなりました。尤も、ミニ新幹線サイズであれば、これが現実的には車格の釣り合いだと思っています。

仕切ドアが開くと、そこは黄色が支配する世界。シート表地がなんともロールシャッハされてる気になってきます。カーテンもデフォルトでクローズされており、ここまで含めて作品という解釈になります。

新潟方A席側に車椅子対応席があります。指定席としての開放タイミングは、例によって例の如く。

全展開の図。越後湯沢向きであれば、少しくつろげるかも知れません。フットレストがややズレますが。

2人掛新潟側の壁面向きだとこんな感じ。床面は、通路部とシート部でカラーパターンが異なっています。

「現美」化されるにあたり、表地や床敷物、カーテン張替こそされていますが、座席各部へのメンテというかリフレッシュ等は特に行われていません。

そのため、フットレストやアームレスト、ソデ体の各所には多少イタミが残っていたり、角度や動作のセッティングという点では不安が残る箇所が散見されます。

12号車は小牟田悠介氏の作品。海側がギンギラのパネルになっています。

ミラールームのようにも見えますが、反対側からの景色や日射の入り方で、その表情がガラリと変わりますね。同じ表情がない展示の1つです。

12号車から16号車まで、13号車を除いて客席側のソファはこのタイプです。両脇の肘掛けが高い位置にあるな、という感はあります。

展示内容やコンセプトによって、1〜3人掛までバラエティ豊かです。

3人掛だとこんな感じ。

背当てはともかく、両脇の肘掛は、後述のテーブル兼荷物入れとの兼ね合いもあるのでしょうが、少し立ち過ぎていると感じます。

12〜16号車には、11号車のような荷棚がありません。ソファ間には、スーパーマリオの「?」ボックスのような鎮座物が所々にあり、テーブル兼荷物入れになってます。13号車で買ってきたコーヒーとお菓子を楽しみながら作品を観る想定ですね。

引き紐でフタをカパッと開け、カバンやリュックを入れるのですが、旅先でよく見掛けるラージサイズのスーツケースなどはノーサンキューです。せいぜいチョイ大形のリュック、あるいは航空機持込可のキャリーケースまで。

でもね…これね…、コーヒーとかそういう水物を、蓋上でうっかり「だばぁ」したら、伝って中に染み込むから大変だと思うんですよ。荷物置場については、もう一捻り必要だったんじゃないかな、と思います。この車内にして、個人的に別形状やプランを考案しては居りますが…。

窓枠を見ると、なにやら黄金のプレートが(笑)。

指定席運用に備え、座席番号表示が所々に貼り付けられています。

13号車はキッズスペースとカフェの車両。アートユニットPARAMODELによる「触れる現代アート」になっています。

キッズスペースの方は、壁面には立体アート、カーペットの小上がり部分ではプラレールが展開され、自由に遊ぶことができます。

よく見りゃ、カーペットの模様はレールの形状に合わせられてるようでもあり…。

プラレールは、運用毎に展開・収納がなされており、JEKIが1枚噛んでますねぇ、と。

で、この収容ボックス。ほどよく使い込まれてる感を感じるボックスに現美のロゴが入れられてて、これさ、欲しい(笑)。

カフェコーナーでは、地元人気店の監修によるドリンクと、お菓子、オリジナルグッズが扱われています。個人的にはここで販売されるレモンケーキ美味しかったよ、と。

通路側壁面には、小武家賢太郎氏の写真作品がズラリ。

パックツアーだと、どうもここでドリンクか記念品との引換ができるらしく、出発早々は滅茶苦茶混み合います。終点近い方が落ち着いて楽しめるかも。

カフェカウンターの横には、ちょっとしたイートインスペースがあるのですが…これのお陰で、カウンター、レジ、商品引渡までの動線が壊れまくり。

正直、これ要らんと思うヨ。

14号車は石川直樹氏の写真パネル展示。定期的に作品が更新される模様。

作品に流れゆく新潟の車窓が写り込む、その動的レイヤーの妙味が味ではないでしょうか。

15号車、荒神明香さんの作品が壁面に。

ここはクロスシート方向のソファがなく、全席が作品と真向かいになります。

加速・減速・カーブ、常に揺れ動く車内で、常に揺れ動く展示。これも同じ時が2つとないタイプの展示です。

勿体ないのは、ガラスケースの中なので日射の反射がなかなかキツいタイミングがあること。これは、できればケーシングされなかった方が良かったかも…と無い物ねだり。

走行中の雰囲気はこんな感じ。トンネル内だったので、作品がグッと表に出てきています。

16号車、Brian Alfred氏の作品。新潟をイメージした映像作品がズラリと並びます。

この車両はデッキ近くに、多段の荷物置場があるので、そっちも是非活用したいところ。

デッキには、各車両のイントロダクションと設備案内がパネルで表示されています。エクステリアは、蜷川実花さん。

欲を言えば、車体外観をジックリ眺められる運用には必ずしもなってないのは、もの凄いマイナス感があります。上越新幹線の越後湯沢以北は、積雪対策もあって、各駅とも屋根に覆われている上、上下線路間にも柱があったり、入線番線の関係で車両全体の迫力が伝わってこないパターンが多いのが勿体ない。

デッキに始まり、非客室エリアは黒い壁と白い天井という、ハイコントラストな基調となっています。

さて、この現美新幹線、展示や設備の通りで、基本的に着席前提による鑑賞のものが多く、見込定員以上の人数が乗車すると、着席、荷物置場、動線のどれもがいきなり逼迫します。14・15号車デッキ部には、大形の荷物が置けそうなスペースこそありますが、自由席となれば理屈上は青天井ということですから。

その点から、運行時間帯によっては旅客が異常集中する可能性があることから、2016年7月以降の自由席化については、朝・晩の湯沢発着運用を除くと、かなりカオスな事態になるのではないかと憂慮しています。正直、全席指定で座席定員以上は入れない方が良いと思うのですが…。

また、現時点の運行についても、新潟・越後湯沢両駅ではドア開放時間をもう少し長めに取るなどの方が良いのではないかな、とも感じられるところ。冬季はスキー需要の臨時便などで線路が逼迫することもあり、今後の運行にはさらなる検討が求められてるのではないかな、と外野ながらポツリ。

通路部分はかくも近未来感のある状態に。なお、トイレ内は「真っ白」な勢いで白いですよ。

編成内に2箇所、カード式公衆電話が設置されています。使う局面は減りましたけどね、さすがにここでアートはしないか…サルバドール・ダリみたいな(殴)。

車両選択に戻る>>
座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通1E3(シロキ工業製)1160mm
普通2E3(シロキ工業製)1160mm