885系電車 最終確認時期:2002年2月

奇をてらう、と言う言葉があります。JR九州の車両は良い意味で奇をてらうことは成功しているようです。とある乗務員氏は885系を指して曰く「白カモメ」…まんまです。いや、その呼び方私も気に入ってるので使わせて貰ってます。

先頭形状こそ某ドイツのICEですが、そのサイドビューはアクセントのラインがチラリと入っている以外はまんま真っ白、さぁメンテに(悪い意味で)定評のある九州がどこまで耐えられるか見物と思っているのは私だけでは無さそうです。

…でも、普通車のサイドビューはお気に入りです。その素っ気なさは間近で見ても驚異。

白カモメから暫く後、日豊本線「ソニック」にもフロントエンブレムが微妙に違っている白ソニックがデビュー。色遣い的にはこっちの方がいいかな…とは個人的な感想です。

「かもめ」の普通席です。真っ白の内装に真っ黒の革張り座席。床こそ木を活かしてますが、そのインパクトは凄まじいです。座席自体は回転油圧リクライニングシートが980mmピッチで並べられています。しかし、ここで特筆すべきはちょっとしたグリーン席に比肩する限界幅(1100mm)まで広がった座席です。

写真は喫煙席なので、サイドアームレストの手前の方にチョコンと灰皿が備え付けられ、テーブルはセンターアームレストから引き出す大型の物になっています。リクライニング量は一般的ですが、程良い剛性と信頼感で革張りの座席らしい座り味を楽しむことができます。

その他、肩の部分には振子車両ではお約束の手摺りがあります。ヘッドレストですが、マジックテープで出っ張り部分の高さを変えることができ、裏面にはチケットホルダーが付いています。

「ソニック」普通席です。基本的な仕様は「かもめ」に準じています。革の色が異なっているのが違いと言えば違いです。カーテンはフリーストップ式、ほのかに格子状のパターンが入っています。芸が細かいですね。

グリーン車隣の普通車(2号車)の座席センターアームレストにはACコンセントがセットされています。ただ、形状がちょっと独特なので、プラグと変圧器が一緒になっている大形コンセントは使えないオチも想定できます。

普通車のデッキ部分です。入っていきなり「山笠」…どうしてくれよう(笑)。ともかく、鉄道車両離れしたインパクトはここに極まれり、と言った趣です。

「かもめ」グリーン席です。真っ白な内装パネル・木の床・ブラックレザーの座席…パッと見た目、普通席とあまり見栄えの差はありません。事実、少なからず普通席と勘違いして入ってくる人が居ました。

相違点と言えば、座席が4アブレストではなく、3アブレストであるという点(だけ)でしょう。

1人掛席、総革張りのソファーチックな座席になっています。取材当時、宣伝のポスターも某T巳琢郎がこのソファーシートに微笑みながら座っている写真を使っていましたが…。

座って驚きです。革と言う素材上、多少の滑りは仕方ないところですが、座面・背面形状共に非常に悪く、座ると身体がズルズルと前方に滑ってしまいます。ここまで壊滅的にボディーホールディングが悪い座席は前代未聞級です。

結果、悲しいことに脚を踏ん張らないとロクに座れない座席といえるでしょう。足腰の弱った高齢者層の利用を想定した粋な計らいとしたら、ブラックユーモアの他何物でもありません。

リクライニング展開状態。よく言えば座席全体に柔軟性があると言うのでしょうが、あまりに腰のない柔軟性です。芯がない、と言えば適切です。安心して身体を預けられないグリーン席となるわけで、貧相極まりない私の主観ゲージをしても「反則」という感想しか思いつきません。

理系第1分野(爆)ド素人の私でも、明らかに重心が上に寄りすぎであると感じます。

2人掛(相当)席です。手前と奥で座席の高さも変えてみました。

2人掛(相当)席の高さの違を後ろから。カモメのエンブレム部分はチケットホルダーになっています。気づきづらいですが…。

1人掛席を上下方向に、また枕高さを調節してみました。枕の高さを変えるのはあくまでも「手動」です(笑)。

頭上のずんぐりとした膨らみはハットラック荷物棚です。

さて、この座席のキモともなる3大機能を司るレバー群です。ユンボやクレーンでもあるまいにこのメカメカした利用形態、誰を想定したモノなのでしょうね。前の座席の後側にそれぞれのレバーの機能と操作方法が記されていますが、いちいち読み込まなくてはならないというのはデザイナーとプランナーの独善に他なりません。

それぞれのレバーは次の各機能に繋がっています。

青…リクライニング
赤…座席回転
黄…座席上下

リクライニングと回転は兎も角、イトー*の学習机も真っ青、鉄道座席でも殆ど例を見ない(おそらく自称)画期的なアーキテクチャ(のつもり)が座席上下レバーです。体格に合わせて座席を上下できるのが売りですし、元々そのための機能です。

しかし、この機構のあまりの動きの悪さは絶句級です。レバーの操作冗長量があまりに多すぎるので、散漫な操作感を持つと共に、座席上下機構については私の体重をして、なかなか下がらない座席もあったり…逆に何かに引っ掛かって上がってこなかったり。一体、メンテナンスをする人はどのようにやっているのでしょうか…事実、車内で座席の高さがバラバラになってスタンバイされている車両に遭遇することも珍しくありませんでした。

雰囲気、見た目はさておくとして、座席としての各機能に不満がありすぎてこれでとてもグリーンとは思えません。これなら普通席の方がまだ落ち着くくらいです。

相当の不評があったかどうか、後日、上下機構は外されたという情報もあります。

運転台後ろは全面ガラス張りになっており、アイポイントは高くなりますが前方の迫力の車窓が覗けます。

こちら、同じく運転台側を見てみました。しかし、ガラスが白く曇っています。これは運転台で非常ブレーキを投入する局面で、前方の悲劇を車内に"中継"しないための機構と言われています。

このスモークドハーフミラー、JR東海のリニアエクスプレス・モックアップで見たことがありますが、実際に搭載されているのを見たのはこれが初めてでした。

些細なカラーコーディネートですが、ハットラック荷物棚の内側は「かもめ」のフロントシンボルカラーの黄色が使われています。

こちら、「ソニック」系統のグリーン室内。座席こそ「かもめ」と同じですが、革の色が赤になっています。ハットラック荷物棚もフロントシンボルカラーのブルーが使われています。この辺の芸の細かさはさすが、といったところでしょうか。

1人掛席、基本的なスペックは変わっていません。テーブル形状が「かもめ」とは若干異なっています。

こちら全展開の状態。「かもめ」ではゴムバンドだった背面のポケットが網袋になっています。現実に戻ったと言ったところでしょうか。

スカスカであまり意識されませんが、シートピッチは1150mm。微妙に狭いのは…何故?

こちら2人(相当)掛。

背面から。「かもめ」にあった座席利用法を掛るパーツが無くなり、代わりに利用法はコーティングされた紙に簡素化されました。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通1付番無し980mm
普通2付番無し980mm
グリーン1付番無し1150mm