交通博物館・交通科学博物館(1) 最終確認時期:2004年10月

大阪・弁天町の交通科学博物館で、2002年に空前絶後の企画展が催されました(笑)。鉄道車両のアコモデーション発展の歴史をやってしまおうという無謀にして快挙、画期的にして恐怖の特別展です(殴)。

この特別展の最大のウリは幻の名車とまで言われ、今は写真資料でしか拝めないクロ151「パーラーカー」の座席であるR2(A)形を展示している事に尽きるかも知れません。この知らせを耳にした私は往復交通費も何のその、特別展に駆けつけたクチであります。

眼前に鎮座したR2Aは枕・レッグレストユニットこそ無いものの、座布団まで良い条件で残されているものでした。記録に依るところの「エジプト」模様の柄も健在、惜しむらくは経年のせいか詰物が見た目にもカチカチに変質していると見られることです。

勿論、本特別展の目玉であり、貴重な資料故、触れる・座るはできませんし、リネンカバーを掛たりも特にしていないとのこと。念のため。

尚、交通科学博物館所蔵数は2脚あり、かつては常設展示されていたとの記録があるそうです。1脚は残念ながら保存状態が厳しいため、今回は出していないそうです。

こちら、座って右側がリクライニングレバー、ノブの部分には「傾斜」と字が彫られています。保存中の問題か、少々曲がってしまっています。

肘掛は比較的華奢な造りとなっており、造形としての線はかなり細いのが特徴です。R2は登場初期、窓側45度固定時に床面にセットされたレッグレストが利用できました。

しかし、やはり、どの角度や状態でも使いたいモノですので、後にレッグレストを装着できるようになったR2Aが登場した、と言うわけです。

座って左側の肘掛内側にあるレバーは回転ボタン。少々固い物ですが(何故知ってる?)、押すと座席が45度刻みで回転し、固定することができます。

背面のヘッドレスト裏側部分には枕を脱着式とするためのスナップが残っています。この枕が再現されれば完璧だったのですが…残念です。

こちら、場所は移って秋葉原にある交通博物館、実はR2Aはこちらにも1脚保存されています。かつては1両分まるまる保管してあったらしいですが、諸般の事情により大阪の交通科学博物館に2脚が流れた他は廃棄され、現存はこの1脚のみとのことです。

クッション・枕共に残っておらず、座席だけかろうじて残された、と言う感じなのが少々残念ではあります。レッグレストユニットについても、残念ながら行方不明…。

以下、交通博物館撮影分については、撮影に際し特段のお許しを頂戴したものについて掲載しています。

こちらのR2Aは肘掛を初め、各部の痛みが少々厳しく、詰物も完全にカチカチになってしまっています。座面のクッションが無いことで、逆にあの下はこのような張り方になっていたことがよく判ります。

レバー・ボタン類の付け位置等については完全を保っています。

大阪の方は一切触れませんので、どの位傾斜するか判りません。そこでリクライニングレバーを用い、最大角度までリクライニングさせてみました。

角度こそ大したものではありません(現在の新幹線グリーン席より僅かに大きいかな?と言う程度)が、これは前後の席や通路との兼ね合いもあったのでしょう。勿論、座面が僅かにせり上がってムリのない傾斜姿勢を保つことができる機構は健在です。

回転ボタンを用いて回転させてみたところです。本来、この窓側には電話ジャックがセットされ、飲み物とコロンバン(または泉屋)のクッキーが並ぶゴージャスエリアが広がっていたのでしょう…。古き良き時代、そして伝説の名車の語り部として末長い保存と完全復元を願うばかりです。

邂逅、と言うには少し時間が早すぎますが、2004年10月12日〜12月26日まで、秋葉原・交通博物館の特別展「JR電車100年」にてついに一般展示が実現しました。

本写真はその準備中、お許しを戴いて撮らせて頂いたカットを掲載しております。行方不明だった座ブトンも元の位置に舞い戻り、惜しむらくは枕・台座カバー・レッグレストユニット。展示キャプションではR-2となっていますが、銘板上、R-2A形座席として取り扱います。

お約束の角度でリクライニング。角度自体は大した物ではありません、現役時代もシートピッチ換算では1100mmと大した物ではなかったですからね。

よく見ると気付きますが、この座席はきちんと座面連動機構を備えており、リクライニング時は座ブトンがわずかに迫り出るようになっています。

今にして、クロ253等、この車両をフィーチャーしたと伝えられる車両がありますが、客層・費用・看板度…どれを取っても未だ並ぶ者無しの伝説は健在です。デッドコピーは所詮(略)で(自主規制)でもデッドコピーです。

かの有名なパーラーカーカットをバックに。この背景の写真はつとに有名ですが、よく見ると窓の向こうには無機質なブロック塀…要はプロモーション用カットというわけですね。

さぁ、足りないブツはあと3つ、ガンバレ交通博物館(何をガンバレというのだ、何を…)。

ちなみに、当該展示期間中、R2-A座席はディスプレイ効果上、リクライニングを1段のみ設定して展示されております。

さて、こんなドッキリ写真が出土致しました。場所は勿論秋葉原・交通博物館。一時期、このようにフルモードで展示されていたとのこと。経緯等詳細は現在調査中です。ちなみに、展示場所は2階別館(現在の休憩室、本館との渡り通路そば)でした。

ご丁寧にコンクリート台座にしっかり固定され、レッグレストユニット・枕・座ブトン・レースカバー(JNRマーク入り本物)ともういろんな意味で完璧です。こうなると、上の所蔵品は「R2」と言えそうですが、これもまた謎が発生してしまいます。交通博物館所蔵R2(A)の座面下フレーム(座席そのものの部分)にメーカーズプレートがありますが、そこには形式名が「R-2A」と刻印されております。

国鉄時代、部品共通化政策によって、パーツ相互の形状共通化が成されている(実態は個体差があって如何ともし難いようで…)ので、上物だけの載せ替えが可能な場合があります。現在の座席では、ちょっと型番が違うだけで上物交換ができるケースとできないケースがあります。

私の聞き及んだ経緯と推測を合わせると…
1・解体等の拍子で台座がR2Aと入れ替わって収蔵。
2・R2もR2Aも所蔵されていた。
3・右写真展示撤収時に載せ替えた。
4・いや、収蔵分はそもそもR2A。
5・メーカーがプレートを適当に貼った。

すなわち、上記の写真と所蔵品は同一である確証が無く、ミッシングリンクとなる資料はまだ現出しておりません。暫くの謎となりそうです。

(その後1)
その後の検討ですが、まず右写真の座席と今回展示された現物は同一ではないと見られます。第一義的なチェックはエジプト模様の表地。私の持つ保存分原版と照合しましたが、ココア色のブロックの入り方が異なっています。
そのため、以前より聞き及んでいるR2当初複数所蔵については確実と思われます。ちなみに、大阪所蔵分ともちょっと違うようです。こちらはもう1台の未公開分との照合こそ果たせておりませんが…。

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