JR四国 多度津工場 最終確認時期:2006年11月

車両検査や改造等、よろず車両関係を手広くカバーする総合型工場の一つがJR四国の多度津工場でしょう。最近の改造車からしてみて、文字通り「JR四国の秘密工場」の趣も見せています。

鉄道工場は当たり前の話ながら、一般見学をあまり前提としていない設えをしています。しかし、中には学校等の社会教育の一環で見学対応設備を持っていたりします。多度津工場も、入ってすぐのトコロに「PRコーナー」が建っており、ここで全般的な説明や見学導入部分のレクチャーを行うそうです。

入って「奥の間」に通されるとすぐ左手で出迎えてくれるのがこれ。58系・65系気動車のクロスシートでバケット改造を行った時のプロトタイプです。バケットの縫い目強度に難があるようで、メンテナンスに泣かされているとか…。

その向こうには更に古い時代の客車座席が置かれています。この辺は東京・交通博物館で見慣れていますので、まだまだ…とか思っていると…。

オハネ17の3段寝台(実車からカッ剥いだ)がドドンと…。2006年秋に某新橋停車場で展示していた20系寝台は2段目・3段目がイミテーションでしたっけね(呆)。幅52cm、私がマトモに寝たら…スミマセン。肩、ハミ出ます。

上をニョッと見上げてみると照明の手前の大きいアレ。そう、冷房改造車から持ってきたものなんですね。

今でこそカバーに覆われた手元灯も当時のはこんな感じ。何ともカワイイ。その下には小物入れの網袋があったのですが…なんか凄く残骸ですな…。

その隣には座席資料的には久々のヒット(笑)。そう、修学旅行用電車の6人掛ボックス部分を切り出してきた実物でございますよ。当時の柔軟性は既に無くなっていますが、長距離運用に備えた迫り出しのヘッドレストも残っています。テーブル部分がちょっくら違う気がするのはご愛敬と言ったところでしょうか。

そして、写真でのみ見るだけと思われた「アームレスト間の有効活用シリーズ」こと「カサ立て」が残っています。生憎、東京・交通博物館に展示されていたモノもモックアップかつ、後期(167系)のものなのでこれが無かったりします。私も現物を見るのは初めてであり、しばし時を忘れて惚れ惚れ。

現物が意外と残っている(というか、何故ココに?的ではありますが)0系グリーン席。R25の原形がココにも鎮座しています。生憎、長年日射攻撃を喰らってしまっており、座ブトンと背面の接合面にしかその色の美しさを見ることはできないのですが、綺麗かつ完動するフレームで残されています。

そして、「何故四国に!?」シリーズの2が0系普通席W70。それも初期バージョンでございますよ、奥さん(笑)。カットは元々の設置位置からして窓側からのショット。こうしてみるとリンク連動の転換クロスシートの機構部がよく判ると言うモノです。

だから、座席脚台の部分にはキチンとメーカープレートが貼られています。

そして、いよいよ珍品・キワモノの部類へ。まず、この座席に「!」と来る人は少数派。シート表地の模様こそ、北海道の183系気動車のそれと酷似していますが…。

四国島内の181系気動車が瀬戸大橋を渡った頃、2000系気動車による置換終了するまでの過渡的な編成とごく一部のキロハ改造車普通席部分に装備されたリクライニングシートです。この頃から既にJR四国では座席形式付番はなされていなかったりするかも知れません(これ自体、付番がないし)。

横から見ると何とも半端な造形。鉄道座席と言うよりバスや船舶座席のフレームの方が近縁でしょう。肘掛部分の灰皿の大きさは鉄道用のそれとは違います。

因みに、単なる改座であればスペック通りの910mmピッチでの配置。キロハ改造車の普通席部分に限っては1160mmとか何だか訳の判らない大盤振る舞い配置でありました。

リクライニングは座面連動式ですが、R51のソレと異なるのは「迫り出し式」では無いんですね、これ。挙動分離はしませんが、座面はあくまでも座面としてのスライド、リクライニングはあくまでもリクライニングです。

背面のテーブルは、紙コップの突き刺しセットを意識した「穴あき天板」になっています。

そのナナメ前には8000系電車の座席を用いたプロモ用「アンパンマンシート」がズデンと置かれています。時折ここを見学する近所の小学生・幼稚園生のいいオモチャにされているのだとか。

2000系気動車に登載された現物も近日アップですが、背面テーブルを開けるとこんな感じ。

リクライニングなども生きていますが、このまま無為に座ると座席もろとも「一人バックドロップ」の刑でございます。

さらにナナメ後ろには物々しい座席が置かれています。これ、国鉄からJRへの移行期に製造された50系客車改造「アイランドエクスプレス」のグリーン客席。編成の半分の座席は今の「アイランドエクスプレスU」に引き継がれていますが、その貴重な1脚がここに残っています。

これも鉄道座席としては少々オーバーフレームでして、恐らく船舶座席をベースにサロンバスのノウハウを融合させたモノになっていると思われる造形っぷり。なにより、恰幅イイですねぇ、単に背もたれが寸詰まり気味なだけですけど。

打って変わって、今度は最近の改造で登場したトロッコ車両(予土線のアレを除く)に登載されている木製座席の見本品、と言っても登載品と同じ物です。

その隣はどこかで見たようなカラーリングと見たことのないフレーム。8000系電車リニューアルにおける普通席のモックアップです。住江工業製の試作品なのでありますが、リクライニング操作部分やテーブルが座席センターに集中配置されたもので、その動線にJR九州800系電車の空気を感じます。

但し、機構部は全くの別物で座面スライド連動のリクライニングシートです。ってか、この脚部でそれはヤメトケ、みたいな典型例でもあります。因みに、サイドのアームレストは木製というなんとも手作りテイスト溢れる一品であり、既に見学した幼稚園児に片側が破壊されたという笑えない状態にあります。

さらにネタをダメ押せば、これでいて偏心回転式…だから、そう言うギミックはやめとけっての(苦笑)。

PRコーナーの外に出ると蒸気機関車・ちんまい客車・新幹線のカットと3並びが見えます。それぞれに何て言い方だ、と怒られそうですが…。

真ん中、何ともカワイイ客車は準鉄道記念物、ロ400客車・ロ481号復元車体です。1906年に鉄道作業局新橋工場で製造された2等車で、1932年の廃車後、鉄道100周年事業で復元されたものです。見学当日は外向き側の補修工事が行われておりました。

特別のご厚意を賜り、中を見学させていただきました。車両は中央のトイレ・洗面台で2室に分けられており、それぞれにいわゆる「ロングシート」配置で座席が並んでいます。各脚4人掛で1室3脚×2室ですから定員は24名也。

車端から中央部を望むとこんな感じ。トイレ部分が壁になってちょっと個室感覚です。

昔々は3等客車がボックス席、2等・1等はロング配置になっていたことを如実に現す座席配置です。

何より、等級面の意地らしきものを感じるは肘掛の当て布とアームレストのフレーム装飾。3等座席なら単に板によるアームレストですからね。

荷物棚の支持金具は一部が本物、一部が復元複製品です。文字通りの「網棚」ですね。

トイレは典型的な和式ですが、復元故、ここは部屋のみの存在です。ちなみに、東京・交通博物館の開拓使号客車のトイレはちゃんと中まで保存されていたり…それも洋式…。

洗面台。こちらの陶器部分と水回り金具は現品です。

C58-333号機関車。キャブ部分はアスベストの問題もあり、今は立入が制限されています。

その隣は21形14号車の先頭部分。コチラはキレイにお色直しがされています。近く造られる十河信二記念館へ移設される予定だそうです。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
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※留意点
1・多度津工場の見学は原則として平日のみ+団体(15名以上)による完全予約制です。
2・一部車内撮影については特段のお許しを頂戴しております。
3・展示座席は、位置等について若干の入れ替えがなされる場合もあります。
4・今回の撮影箇所は年1回程度の一般公開において開放される場所と異なるものもあります。
5・展示座席の着座については詰物や表地の保存の関係もあり、行わない方が幸せになれるでしょう。
6・無理な着座によって衣服が汚れたり、座席バランスが崩壊して転倒したとしても自己責任の範囲内で。

※改めまして、本件取材・見学に特段のご配慮を賜りました皆様に御礼申し上げます。