東武100系 最終確認時期:2004年3月

1990年登場、ブルーリボン賞・グッドデザイン賞と登場時点でおおよそ獲れそうな賞は総ナメにしてきた車両でもありますね。足まわりについて比較的保守的と言われている東武にしてVVVF本格採用(10080系が初投入)と言う記念碑的な面もあるのではないでしょうか?

登場当初の東武特急と言えば、ノンストップ・定期券利用不可・ラッシュ時堂々の回送アリ、と日光/鬼怒川観光の象徴として孤高にして独自のパッケージを守っていました。

しかし他私鉄が看板特急の通勤利用開放を進めてきた中、下今市上下便全停車を皮切りに途中停車駅倍加、定期券利用開放…都市間特急・通勤特急としての利用しやすさ、と言う面からも環境整備がなされてきました。

一頃、東武特急と言えば「けごん」が主力ですし、私もその意識が強い1人でした。しかし、最近の時刻表を見ると鬼怒川方面の「きぬ」が主力になってるんですね。

この100系、あまりの大出力&全電動車(=電気喰い)装備からこの新藤原より北(野岩鉄道)には入れません。そういう意味ではモンスターと言われても仕方ありませんね…。最高速度は120km/hとなっていますが、本気でブン回したら相当出るという話もチラホラ。乗ってみると判りますが、本気走りなんて局面は滅多にありません。ホント、余力で流しているようなシーンの方が多いかも知れません。

車体にはこのようなロゴスペースがかなりあります。単なる座席スペース以外のアメニティ部分が多いと言うことを示していると思います。

方向幕の下には、こんなエンブレムがあったり…。

一般席車内に入ります。白を基調としたものですが、帽子掛や荷物棚など所々に見える金色のモールやパーツが水平方向のラインイメージを造りつつ、ブルーの入ったフォギーグレーがベースとなった座席色と間接照明のお陰で統一されたイメージが損なわれていません。

座席本体です。天龍工業製造の偏心回転油圧リクライニングシートが並んでいます。シートピッチは堂々の1100mm、フットレスト・インアームテーブルと付帯アーキテクチャはごくごくオーソドックスですが、フットレストの大きさや裏面反転時の足置きスペースの大きさ、その質感はJRグリーン席に迫ると言っても過言ではありません。

窓側には大形の折りたたみテーブルがセットされています。これは東武長距離列車のDNAなのかも知れません。今後登場するであろう後継車でも引き継がれて行くのでしょうか?

タテ撮りしてみるとこんな感じ。荷物棚のエッジや帽子掛は金色で奢られ、読書灯にスポット空調とおおよそ昼行列車としてはこれ以上の何を望むべくか、と言ったところです。

こんな死角無しの座席ですが、個人的には縦方向で少々強調されたライン取り+クセのあるバケット形状について、実は不満です。クッションも腰部の詰物が薄く、メリハリが少し無いかな…とは思っています。横幅については偏心回転機能を奢ってまで稼いだ横幅がどこかに消えているような感じすらあります…と思ったら、横幅ってJRよりちと狭いのね…仕方ない。

何だかんだでケチを付けてますが、一般的な特急車両であれば、トータルバランスまで含み込んだ領域まで求めていないと思います。人力車に向けてスポーツカーとゼロヨンでバトれと言わないのと同じです。

床は一般的な鉄道車両の3倍厚と言われています。そのお陰か、力行時のVVVF特有の唸りすらかすかな音にしかならないことについては驚嘆と同時に感心です。

車両の端部に位置する座席の場合、壁面の大型テーブルは妻面にセットされ、フットレストもちょっとお手抜きな片面オンリー仕様です。

こうして見ても判りますが、仕切扉の取っ手・窓ガラス押さえ金まで金色の縁取りが貫かれています。このバブリーさ、今となっては日本最強と言われても過言じゃありませんね。

さて、こちら登場当初の一般席。サイドアームレスト内側にオーディオユニットが見えます。これが実にバブリーな構造でして、イヤホンを使用しない場合はヘッドレスト脇のスピーカーから音が出る仕組みになっていました(後にオーディオユニットと共に撤去)。

投入編成単位での違いか、オーディオユニット撤去時に手が入れられたかどうかは不明として、リクライニング角度が上記のものと異なっているのが判ります。こちら(すなわち、以前の方)が若干深めになっています。

このころは、座席後ろのポケットや、デッキのマガジンラックに座席利用の手引きが入っており、回転時は通路側に少し座席が迫り出る旨の注意書きがありました。実際回してみてもそう心配するほどではないと思いますが、まぁ「一応、書いたからねぇ」みたいな感じです。

東武特急と言えば、かつての1720系DRCにはジュークボックス(後に撤去)やビュッフェがあったりとアメニティという点で他に見られない重厚な装備が多くありました。

100系にしても、私鉄特急として完全な個室があるというのはザッと思い起こしてもこの車両位しか思いつきません。セミコンパートメントであればいくつかありますが…。そのアプローチ通路部分、通路上はカバー付きの蛍光灯ですが、壁側には電球によるシャンデリア調の装飾照明がセットされています。

よく見ると、窓下の手摺りも金色…紙一重で下品に見えないところはロバート・マーチャントによる「乗った時から高級ホテルのおもてなし」と言う設計センスが入っているためとしか言いようがありません。

そして、個室に入ります。大形の大理石テーブル、金色に縁取りがなされた部分、実はラジオアンテナの役割も持っている一石二鳥(?)ぶり。

ソファーシートアームレスト先端にはオーディオユニットがありました。

着座感もしっかりとしたソファーシートとなっており、個室内定員は4名。グループ利用が念頭にありつつも、各個のプライバシーが独立して保てるような仕掛になっています。

大形の収納式アームレスト。デザイン的に統一されて居るところはさすがです。JR100系新幹線の4人個室もこの辺の造作は似ていますが、アームレスト先端をテーブルとしたかこのような金属によるフサギ板として装飾のみとしたか、についてその発想の起源を辿るのもまた面白いでしょう。

見れば、個室室内の一番上の写真にあったオーディオユニット類がありませんね。

荷物棚の下には各個用の読書灯があります。スポット空調は不要ですね、確かに。

通路との仕切扉上にもスピーカーを組み込んだ照明ユニットがあります。よく見ると、ユニット下、仕切扉との境界線付近は何故か切り欠きがあります。これはかつてここにカーテンがあり、それが撤去されたことを示しています。

照明等の操作パネルです。調光や放送音量など、結構いろいろと弄れます…が、どういう訳か照明は全落ちしません…あ、ひょっとして上のカーテン撤去と絡んでいろいろとあったわけで…(苦笑)。

JR100系のグリーン個室は、その主たる利用者層からして完全施錠・カーテンガードは最後まで守られました。各個室とも完全消灯が可能でした。尤も、この東武100系より遮音性は低い(というか、少なくとも通常の話し声は筒抜けだった)ので(略)で(自主規制)な事態は(やっぱり略)となる危険性もあったわけですが…。

3号車には軽食・喫茶を一手に引き受けたビュッフェがあります。1720系以来の伝統であり、シーズンの日中ともなれば様々な商品が並べられた華やかな空間が広がります。当時のメニューシートも持っていますが、おみやげ品まで全て英語併記があり、なかなか充実した品揃えでしたねぇ。

通常、特に営業がない場合はこのようにカーテンを閉めています。

端には、主として外国人向け案内も行えたサービスカウンターと公衆電話ボックスがあります。かつての東武特急には車内喫茶を受け持つ女性乗務員とは別に「スチュワーデス」が乗務し、車内改札業務は勿論、国際的観光地・日光へのインフォメーションサービスも行っていました。

外国人の利用も多い列車だけあって、スチュワーデスの条件は英会話ができることと言う、なかなかハイソでアーバンでありました。しかし、時代は移り、車内営業形式も給仕サービスからワゴンによる車内販売へと簡素化され、スチュワーデスも「スペーシアレディ」として統合されてしまいました。

トイレ等の非客室空間にしても、JR九州もビックリと言わんばかりに統一された色調でまとめられており、そのデザインセンスは今、改めて乗ると「ああ、バブルの結晶」と思わずにいられません。

だって…ゴミ箱のフタですら…ほら。

各車両のデッキ仕切扉上には、このようなLED表示装置もあります。登場時期を考えると割と先進的ですねぇ。フォントがちょっと古めかしい16ドット文字というのは我慢我慢。

しかし、なかなか良いサイズの「余白」が春日部停車時のドア扱い位置を知らせる場所になってしまいました。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通2形式不詳(天龍工業製)1100mm