伊予鉄道D1・D14列車 最終確認時期:2003年4月

「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。」夏目漱石の名作「坊ちゃん」の冒頭です。教師として滞在していた時期の経験を基とした作品ですね。

一時期、衰退一色だった路面鉄道に生まれた新しい方向性の1つが観光地特化と言えるかも知れません。列車も観光資源、そのコンセプトと地元の協力で生まれたのが「坊ちゃん列車」です。

松山鉄道「坊ちゃん列車」、見た目はSL列車ですがその実はディーゼル動車(煙突から煙のイミテーション付き)です。さすがに煙を吐いて…は街中では難しいですね。機関車は1号機関車のレプリカとなっています。D1号・D14号の2両が居ます。

運用の合間、道後温泉駅の引き揚げ線にある展示留置線でこのように鎮座しています。

機関車は新潟鉄工所製、社紋がまぶしいです。

機関車の宿命は終点の方向転換。しかし、どの写真を見ても、どの行き先でも機関車は進行方向を向いています。

転車台は…と言えば、各終点にこのようなターンテーブル設備が有ります。厳密に言えば、所定位置に着くと下から機関車を持ち上げて車体をぐるり1回転させています。客車はそのまま、人力回送…体力勝負だ…。

さて、客車に入ります。こちらは長め1両のもの。可能な限りで当時のムードを再現しています。ニス塗りで美しい木目が浮かびます。

車内は手摺り、室内灯、連絡用インターフォンがある程度…実に潔い車内です。登場当初、ここに専属の女性乗務員が乗り込んで、お団子のサービスがあったのですが、今はありません。

座席は…って言うほどのモノではありませんが、浅めの板張り座面が窓側にロングシートとしてあります。2軸客車、クッションレス、乗り心地は推して知るべし、ってか乗り心地を考えたらとても乗れません。SL列車の煤煙と同様のお約束を覚悟して雰囲気で乗りましょう。

こちら、小さめ×2両の側。車内はこちらの方が少々凝っています。列車自体の輸送力としては1両客車・2両客車ともに36名となっています。

客車の屋根にはパンタグラフのようなモノがありますが、これはポイント切替といった運行管理のため、必要に応じて架線をタッチするものだそうな…。

座席自体は前車同様のベンチシートですが、足もとの部分が空間ではなくカバーで閉じられています。こちらの方が乗り心地としてはさらに過激なものと思われます。私は痔持ちではありませんが…なかなか厳しかったです(苦笑)。

手摺りについては、観光列車で吊り革といった野暮なモノではなく握り棒が通路方向に渡されています。これを掴む訳なのですが…混雑したらつらそうですね。

窓を見ると、窓の下に別の取手が…持ち上げるとこれが日よけのヨロイ戸…へぇぇと感心する次第。個人的には窓上のスリット上になった通風口にちょっと注目してほしいですね。

機関車はディーゼルですが、実際乗ってみると一応SLサウンドが連動して出るようになっているという一頃の学研製Nゲージのそれをリアルに彷彿とさせられました。とりあえず、松山に訪れたら一度はお試し下さい。

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