京阪800系(リフレッシュ前) 最終確認時期:2006年2月

「京阪乗る人、おけいはん」有名なコピーですが、そんな京阪にも様々な顔があります。数ある関西私鉄の中でも、テクノロジを惜しみなく旅客車とサービスに盛り込む会社であると思っています。そのマニアックにして優美な車両とパーツの数々は見ていて飽きません。

地下鉄乗り入れ規格・中型サイズとされる車体に、てんこ盛りの信号保安装置類+急カーブ+急登坂+路面軌道対応の走行性能と装備…無茶苦茶なまでの要求が重なっていますが、それらを職人芸と創意工夫で1つのパッケージに凝縮させた「鉄道技術のおとぎ箱」的な車両です。

目まぐるしく変わる車窓と溢れるスピード感、劇場路線の主役にふさわしき出で立ちです。

4両編成のうち、両先頭2両はセミクロス配置に、中間2両はロングシート配置としています。写真は浜大津方先頭車の全景です。

クロスシートは車体幅の制約もあり、1&2の3アブレストとなり、かつ中央の客用扉を境として方向固定の集団離反配置になっています。転換クロスシートが幅を利かす関西では異色の存在と言えます。

中間のロングシート全景。ちょっと詰まって見えるのは車体長と車体幅が災いしています。白系統の化粧板が車内を暗くしないようにしていますね。

ロングシートは詰物を奢ったタイプです。阪急9300系ほどではないにせよ、背ズリが低めなのは…まぁ仕方ありませんよね。特段、着席区分などは示されていないのが関西クオリティです。

座ブトンと背ズリの間が離れています。昨今流行の座席を意識したのではなく、この間の金属板に開けられた孔から座面下のヒーター熱を腰回りにも持ってくる仕掛なんですね。これが「京阪てくのろじ(敢えて書けばこんな感じ)」です。

車椅子スペースもバッチリ。壁面には薄型のパネル式暖房機が設えられています。隣のロングシート部分ですが、微妙に1.5人分程度の幅を持っていたり。

いよいよ魅惑のクロスシートへ。ノルウェー・エクネス社製の固定クロスシートが860mmピッチで並んでいます。先頭部とドア部分との仕切は低めにし、目隠し的なプライバシより眺望と開放感を優先させたものになっています。

このブロックで見るべきはその仕切板の座席側、座面と同じ色の生地を貼って寒々と感じさせない設えになっています。ここが無機質にしてぶっきらぼうな会社と細かいトコロまで気を配れる会社の違い。

側方眺望という点で見れば2列目が最もパフォーマンスが良いでしょう。シートピッチは先述の通り860mmなので、旅行カバンなどを持ってると「よっこいせ」なのですが、あくまでもこの電車は日常の足。大きな荷物はどこかに預けて、身軽に乗り込むのが一番楽しいことでしょう。

ドア前最後尾列は、頭上に立客向けのバークッションがあります。ここもただの仕切棒で無いところが何とも言えない気配りを醸し出しています。

2人掛席先頭部。浜大津向きであれば、前方でダウンヒルが味わえる席になります。

2列目となれば今度は乗用車とのバトルランが楽しめます。眺望的には2人掛の方が総じて眺めは開けているように思えます。

2人掛3列目。1人掛同様に立ち席客向けクッションが目立ちます。

さて、先ほどの車内全景を見返してみると、狭胴車体のワリになぜかスッキリとした風合いが感じられます。これ、吊り手が必要以上に視界に入ってこないこともあるでしょう。

ドア部分の吊り手はこのようにバネ仕込みとなっており、使わないときはクランク状に跳ね上がるようにできています。使い慣れてないと、実際の落ち着く位置が見た目より前になるのでちょっととまどうかも知れませんけどネ。

ドア上には路線図と蛍光表示管(VFD)による情報提供装置があります。この辺はオーソドックスにして標準的。

そして、この座席で注目すべきはその表地。背面はジャガード織りのブルーグリーンを用いています。ジャガード織りって、結構お高いそうで…。

ちなみに、JR西日本681系電車の試作グリーン席がこのジャガード織り、量産車からはコストの高さに負けて(ゲフンゲフン)。

座面はパ-プルブルーを用いています。車体色に合わせた軽やかなカラーリングですが、生憎汚れが目立ちやすいこともあったか、別稿の通り車内はカラーリフレッシュされるようになりました。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通1不詳860mm
普通2不詳860mm
※ご案内
・本コンテンツは取材および作成に際し、NPO法人京津文化フォーラム82
および想月堂有限会社のご協力を頂戴しております。改めて御礼申し上げます。