近鉄21020系(アーバンライナーnext) 最終確認時期:2003年6月

西日本私鉄の雄、近鉄が放つ名阪特急の次世代車は「next」のロゴも鮮やかな21020系「アーバンライナーnext」です。一見アヒル顔ですが、おでこには強力HID灯を4発装備、闇夜では遠目にも迫力を感じます。

既に鉄道友の会の「ブルーリボン賞」を受賞し、近鉄名特急車の必要条件(?)を満たしつつ、年輪を重ね始めていますが、車両アコモデーション面でも節目を飾ることが多い近鉄故に、乗る前から期待が高まります。

レギュラーシート全景です。全面的に間接照明を取り入れながら、極端な暗さを感じないのは天井2列に加え、荷棚下両脇に2列で4列もあるところから判ります。照度との兼ね合いで、半間接照明でお茶を濁す優等車両が多い中、本格的な間接照明を正面からぶつけてくる辺りに並々ならぬ意気込みを感じます。

仕切扉両脇にはハロゲンライトによるスポットライトがアクセントになっています。遠目には扉脇ガス灯のイメージ…視覚の点からすると、空間造りは相も変わらずの秀逸さを感じます。

さ、それでは座席を見てみましょう。回転油圧リクライニングシートが1050mmピッチで配置されています。後述のDX席と共に「ゆりかご型リクライニングシート」が採用されました。

要は座ブトンと背ずりがリクライニング角度に応じ、連動して安楽姿勢を取る機構です。「ゆりかご型」と命名しない限りにおいて、国鉄R21〜30系列はこの機構を持っています。明確に「ゆりかご型」を命名したのは航空機が先でしょう。

レギュラーシートではリクライニングに連動し、座面が尾てい骨方向に沈んだ上、センターアームレストも各個独立して斜めになります。

しかし、無理にパーソナルスペースを実現しようとしたツケがセンターアームレストに象徴されてしまい、結果として狭すぎです。さらに、アームレスト自体も出入りを考慮したのかどうかは別として、あまりに寸足らずで機能として不充分。おまけにヘッドレストと背面の周り込み部分が堅すぎです。結果、逆に貧乏くさい感じがしてしまうのが残念です。「ゆりかご」は無理にやらかさない方が良いようです。

レギュラーシートについては、何らポジティブな感想を持ち得ないと言うのがインプレッションです。「アーバンライナー」の名前に期待をしすぎていた自分が愚かだったのでしょうか?ってか、正直なところよくこれでOK出ましたね、ホント。

2号車には車いす対応座席があります。このスタイル、全国の私鉄特急で見かけるスタイルです。機能との両立を考えるとこの辺が限界もしれませんね。

21020系の客室内は全面禁煙です。そのため、車両間にこのような喫煙スペースが設置されています。エアーカーテンに吸煙機と配慮は窺えますが、所詮はオープンエリアの性で煙は客室内に流れてしまっています。大阪方面行きでDXシートは…あれ?煙かったぞ〜!

洗面台・トイレ区画については曲線を活かした上で、車椅子でも出入りに不便が出ないような動線配慮がされています。そのあおりで男子小用が異様に狭すぎ(笑)。

その狭さ、個室に入って扉を閉めるのに難渋するというのは問題になりそうな気がする位です。いや、私がワイドボディだからと言うことを差し引いても…。

いよいよDX席です。初代「アーバンライナー」のDX席と言えば、明確な世界観に立脚したデザインと、きめ細かい人的サービスに裏打ちされたゴージャスなサービス、比較的お手軽な差額がもたらしたコストパフォーマンスという点から私鉄特急のサービス面で最高峰にランクされていたと思います。アコモデーション的にも、その後のアコモデーションインフレの嚆矢となり、一時代のきっかけを作ったと評価できます。

nextの場合、内装板はレギュラーとイイ勝負程度になっており、違うところと言えば仕切扉が1&2配列に合わせて少々寄っていることと、座席色がワインレッドベースになっている程度でしょうか?総じて寒色イメージです。室内灯でレギュラーとの差別化を図らないのは先代譲りですが…。

1人掛席です。近鉄の座席と言えばちょっと前は殆どニッパツだったのですが、ここ最近は軒並み天龍工業が手掛てます。シートピッチ1050mmはこれまた先代と変わりません。

デフォルトポジションで座る限りは、しっかりした座面と心地よいピローが良い感じです。

展開状態。噂の「ゆりかご型リクライニング」状態です。座面は背ずり連動チルトのみ、背面はそれなりのリクライニング量です。実際に掛てリクライニングさせてみたものの、何となくランバーから肩スジに掛て前方にでっぷりと押し出されるような感じがします。

フットレストを展開すると、土足禁止面が出てきますが、床面・座面のいずれの色でもない色は人によって使い方が分かれてしまう良くない例です。この面、単なるマットにして安く上げているような気がします。

お尻の辺りは重心が下がるように沈み、確かに全体的にコクーンな感じに近くなります。しかし、フットレストなどの付帯アーキテクチャが高度・角度可変に対応できず、膝裏が圧迫気味になってしまいます。座面チェック基本のキが何か置き去りにされたような気がします、というか置き去られてる…。

座面詰物はそれなりに奢っているように思えますが、背ずり、それも肩より上の部分についてはどうにもしっくり来ません。そこへ来て、アームレストが高め設定の為か両脇が少し開いてしまいます。これは肩幅が狭い人についてはつらい体勢になるものと思われます。私は肩幅と態度のデカさを自認しますが、それでもやはりこの部分に違和感を感じます。

2人掛席です。1人毎に座席を独立させる配列については、夜行バスでおなじみですし、昼行列車としてはJR九州の885系が不本意ながら実現しています。3列完全独立のあおりでアームレストは狭く、腕を置いても飛び出てしまします。華奢(チャチとも言う)を地で行くものであり、初代アーバンライナーのどっしりとした重厚感の影はそこにありません。アームレストカバーについても、デザイン的に連続性が途切れてしまっているのが物足りない部分を感じます。

座席間を見下ろすと台座の表地がむき出しになっています。どういう訳か近鉄の座席台座は無骨でデザイン的にあまり良いとは思えません。その悲惨な眺めが思いっきり…。

リクライニングは電動で行えますが、スイッチを操作すると仰々しく「ガコン…」と言って動き出す辺り、ちょっとシームレスさに欠けると思われます。まだ投入されて間もないと思っていましたが、スイッチ接触はあまり良くないようです。私が乗った日も後ろの席のスイッチがロクに機能して居なかったようです。…実は、私のも接触がちょっと…ね。

そのほか、高輝度LED10発を用いた読書灯など、なかなか目新しいのですが、角度調整ができないのが最大のガンです。あの角度で本を読め、というのは結構厳しい角度になってしまっています。輝度は相当なのでしょうが、点いているのか居ないのかよく判りません。むしろ、前席がぼんやり照らし出されてしまうのは…なんかねぇ。

この座席で最も「イケナイ」所と言えば、インアームテーブルと窓際の小テーブルです。テーブルを展開して、なお座席が回転できるようになっているのは趣味誌で知られたところですが、テーブル外縁に縁取りがなく、また滑り止めなどの表面加工も全くなされていない上、やや前のめりにテーブルが展開されてしまうので、盤面がものすごく滑ります。

使ってみるとよく判りますが、怒濤の加減速でペットボトルやビール缶などはツツツ…とどんどん滑っていきます。縁取りがあればそこで一応止まりますが、この座席にはありません。その点でかなり使い勝手が悪い(というか完全に失敗作の)テーブルといえます。

窓枠は物が置けないよう、斜めカットになっています。京急2100形と似た意図を感じます。その一方で窓際にちょこんと設置されている白い小テーブルですが、これを従来の壁掛テーブルよろしく使っている人が多いです。そのサイズがビール缶等を置くのにいまいちしっくりしないのは…これが携帯電話置き場を想定しているとすれば納得して頂けると思います。しかし、そうなると通路側の人は使えないんですね…。おまけに、想定用途が利用者に伝わっていないこともハッキリしています。これは誉められるモノではありませんね。

1人ごとに座席が独立しているのに回転は、と言えばこの通り。逆に言えば、座席が妙にギスギスしているのはこれがため、と言う皮肉な結果とも取れます。面白いと言えば面白いのですが、それが居住性への貢献でないところがねぇ。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
レギュラー1不詳1050mm
レギュラー2不詳1050mm
DX1不詳1050mm
DX2不詳1050mm