近鉄16200系「青の交響曲」 最終確認時期:2018年01月

近鉄南大阪線から吉野方面への特急輸送、長らく「さくらライナー」がフラッグシップとなる特急車群で構成されていました。

標準軌他線では「しまかぜ」などリゾート特化した特別車構成による車両が出ているところ、同線は全力運転してイイトコ1時間40分程度で終点の中、大人の移動空間と銘打った価値観による特別車両を作り出しました…なお、一般車からの格上げ改造で…。

車体側面はタネ車のドアや窓位置を織り込みつつ、適度に潰したり形状変更したりと、かなりの大改造になっています。

後述の2号車など、カフェとラウンジの専用車となっており、窓が大幅に変更され、巨大なトレインシンボルマークが張り出されています。

編成は大阪阿部野橋向きに1〜3号車の3両で構成されており、ツアーなどの団体利用が入ると3号車が割り当てられているようです。

そうなると一般販売は実質1号車の1両(29席)のみとなり、そこから車いす席等、事前ブロック分を差し引いて1運用25席程度が販売枠、向き合いのツイン席・サロン席は駅窓口かエージェント販売となるので、全国からネットで予約できる枠は11〜12席(3号車が開放されて32席程度)。

自ずから往復ともに座席争奪戦のプラチナチケットとなるようです。

3号車は座席定員で37名。後述の通り、座席配置に特徴があるので、整然と向きが揃った座席が並ぶという光景ではないところにヨーロッパの都市間列車っぽい印象を受けます。

…で、満席運行中の車内全景だったはずなのにどうやって撮れたんだろう…俺…。

座席は天龍工業製のYR290。従来は掛人数ごとに型番を分けるのが通常だったのですが、この形式はワンオフという事情も見込まれているのか、席位置の差分まで包括して掛人数に関係なく同型番となっています。

シートピッチは近鉄文法のカタログ上1050mmじゃないかと思いますが、一応、実測値で1040mm。ソファっぽいバウンス感に振り込んだ掛け心地で、奥深さを感じる背ズリ形状や座面は穏当かつ定石狙いといった風合いです。座面の長さに少し物足りなさはありますが、ヒップ周りは普通にしっかり座れる良席ではないでしょうか。

リクライニング機能は座席回転ができる区画のみ、その他、シートバックテーブルやインアームテーブルも同様。壁面足下にAC100Vコンセントが付帯設備として見当たります。

2人掛席で比較すると判りますが、リクライニング角度は抑えめとなっています。

つまらぬ話ですが、この列車、センターアームレストのスペーサー設定(あるいはメンテナンス)がなんかヘマなんですよ。この席もそうでしたが、少し下に垂れてます。

向き合いのツイン席。吉野向きで左側、1人掛側に設置されています。向き合いの真ん中には大形のテーブルが設置されており、リクライニング機構は省略され、その代わり、若干ですが背ズリが傾けて固定されています。

アームレストやソデ体、ヘッドレスト上端にある握り手など、随所に竹を用いたパーツを用いており、シート表地の緑とのコントラストにはメリハリを持ちつつも、似合う感が漂います。元々の色の取り合わせに近いから、というのがあるのでしょうね。

サロン席はツイン席と通路挟んで反対側に。テーブルも相応に大きくなっており、窓側は通路への出入りに少し難儀するかも。

そして、最近の旅行トレンド入りした「おひとりさま」に相応しい、ある意味近鉄の理解力と優しさ(笑)の賜物とも呼べる変則1人掛席。

1・3号車の運転席直後にそれぞれ1席のみ設置されており、ナナメ配置により、窓からの眺望と、壁面真向かいという閉塞感を和らげる妙手配置です。ここも、ボックス区画と同様にリクライニングができない席です。

結果的になのか必然的になのか、反対側は運転関連機器の設置場所となっており、文字通り貸切調の書斎的空間になります。

紅茶とケーキでも揃えれば、午後のひとときをアンニュイに過ごすのも悪くありません。

この1人掛席も、デフォルトでややリクライニングした状態になっており、隣のツイン席背ズリと寸止め的な位置になっています。

阿部野橋側1号車のデッキ寄りには車いす対応の区画があります。

運転席向きには、大きなディバイダーが設置され、反対側には吉野向きの際、2人掛通路席のテーブルが出るようになっています。

テーブルは、固定式ながら大形の盤面。

なお、この区画にはAC100Vコンセントがありません。

ストロボオフの全景。

近鉄のライティングは各車両で定評がありますが、この車両も雰囲気が出るように色調などが計られていると感じられます。

ただね、荷棚が正直ブチ壊し感あるかなぁ、と。じゃぁ荷物置場をどうするか、というのもありますけどね…。

2号車はラウンジ車両として、阿部野橋側がラウンジスペース、吉野側にバーカウンターがあります。

荷棚も無ければドアも無い。スポーンと車体断面が見通せる開放感満点の空間です。

ラウンジスペースは、側窓が小さめになっており、ソファが20席程度設置されています。

ソファに掛けて窓から外を見遣ると、視線の高さに窓が来るようになっており、少し前の寝台列車なら上段にあった小窓っぽさもありますね。

ストロボオフで撮ってみるとこんな感じ。天井の仕込み間接照明と、ランプ調照明、壁面色が相まってシックな風合いです。

天井の象りも立体感があって、イイ感じです。

吉野側車端にはライブラリーコーナーがあり、奈良や沿線関連の写真集が置かれています。

ライブラリの反対側はベンチが置かれ、書籍が座って読めるようになっています。

多分に空間作りで持て余した感が無きにしも非ずで、今後、何らか手入れがされるような雰囲気も残ります。

トイレなどは1号車に集約設置されています。

吉野向きで右側は男性用トイレ、左側には洗面台が設えられています。

ドアも、近鉄一般車特有の妙に広い窓から、イメージががらっと変わりました。

ガラスが戸先部分に細く入る、少しミステリアスな雰囲気ですね。何がツボって、天井の照明のグローブ意匠が素敵。

ドアを挟んで客室に近い側には、車いす対応の多目的タイプのトイレが設置されています。

トイレ個室内は…おお、壁面が青というか、翡翠碧な色合いですね。

温水洗浄便座をキッチリ設置しており、この辺は抜かりなくという感じです。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
特別車両1YR290(天龍工業製)1040mm
特別車両2YR290(天龍工業製)1040mm