近鉄16600・22600系(Ace) 最終確認時期:2010年8月

近鉄の次世代汎用特急車「Ace」としてデザインされ、南大阪・吉野線用16600系・標準軌用22600系にて登場したタイプです。先代22000系より色分けのメリハリがハッキリして、これまたスズメバチっぽくなりましたこと…。

両形式、ほぼ同じ車体と言いたいところですが、16600系の方が後発らしくサニタリ設備の配置見直しによる若干の窓割・ドア位置変更を行っています。

車内全景は「さくらライナー」調の座席カラーリングと、白色系の明るい内装パネルによる鮮やかなコントラスト。都合4列となる間接照明と空間作りは、いかにも近鉄特急「勝利の方程式」といった感を新たにさせます。

荷棚下の各座席列ごとに見える窪みは、座席各個へのスポット空調です。最近の新製特急車両では見られなくなったのですが、この形式で本格復活。個人的には大歓迎したいと思います(笑)。

座席は天龍工業製のYR258形座席をアーバンライナー級の1050mmピッチで配置しています。アーバンライナーNext以来、この手を俗にゆりかご座席と称しているようですが、本形式座席については背座傾斜連動のみであり、座面スライド連動が見られない点からして、その名称付与はあまり適切とは思えません。

さて、そのアーバンライナーNextモデルで酷評した座席ですが、座面形状ではフィッティング感の向上を狙いつつフラットフェイス指向に、ソデ体形状は、長さ・角度ともにこれまたキッチリ改良されています。テーブルについては、近鉄特急お初の背面大型テーブルと、ソデ体収納型のインアームテーブルの2系統を備え、ユーティリティが向上しています。

窓枠下は、腕がしっかり入れられるよう、窓枠形状も工夫されており、空間リソースを旅客設備にキッチリ絞り出し、無駄にしないような意図が見て取れます。

さらに、足下には降下固定・ペダル跳ね上げ機構を備えた本格的な両面フットレストが備えられ、両フットレスト間にはAC100Vコンセントが1基設置されています。フットレストについては、土足面が床面と同色・土足禁止面は座席表地と同じ布を貼ることで、用途を視覚的に伝えられるようになっています。設置高さや角度もイイ感じなんです。この辺、アーバンライナーNext以来のおマヌケな状態から抜け出たな、と軽く感動。

座席環境として見ると非常に練り込まれ、工夫の凝らされた「スキのないアコモデーション」としてパーフェクト評価を出したかったところですが、アホの子が1カ所。

センターアームレストのリクライニング時の角度連動は…やめようよ、マジで。これさえなければ、完璧だったのにナ、と惜しまれるところです。お隣との肘掛戦争であれば、切り分けは可としても角度連動させなければ良かっただけ。

リクライニングした状態で自分側のセンターアームレストを完全に跳ね上げ、隣席のデフォルト角度のアームレストを使ってみたら、角度・フィッティングともに素晴らしい位置(角度)関係だったので、余計残念。

車椅子対応座席、色使いこそ他の席と同じですが、ソデ体のフレームは22000系をはじめ、全国各地の同様の座席と似た寄ったになっています。

座席フレームと回転スペースの関係で、この向きでは、前席とのシートピッチが1280mmと隠れた広々席となっています。

リクライニング時、座面後端が沈み込む連動機構は他の席と同様に機能します。肘掛けは両側とも完全に跳ね上げることが可能になっています。

車端部座席には大型の耐荷重仕様テーブルとAC100Vコンセントが備え付けられ、コンピュータの利用も不安ありません。名阪乙特急で乗り通すなら、なかなかまとまった時間になるので、良い仕事時間とも言えるでしょう。

さて、ここからが近鉄の本気。

通勤から観光までの汎用途を見込んだ車両故、座席をグループで利用する場合などは当たり前に座席を回転させますが、その場合にどうしても頭を擡げてくるのが双方の向きによるリクライニング干渉問題。一般的なシチュエーションでは、進行方向逆向き側が遠慮すべきとは思いますが、実際は…ねぇ。

さてこの座席、その特徴ある前のめりに切り立った角度がどのように作用しているかと言えば、リクライニング時の前席圧迫感軽減のみならず、双方がリクライニングをフル展開した場合でも干渉しないよう「寸止め」できるようになっています。このシートピッチであるからして実現した側面もあるのですが…。

偶然の産物(のはず)ですが、跳ね上がったフットレスト布面が、この「座席の谷間」に置いた荷物を両側から優しくサポートしてくれたり…。ゴチンゴトンと無粋な音を立てづらくなるとか、色々凄いぞ、これ。

近鉄の本気その2。

途中駅から乗り込んで座席を回転させるシチュエーション…する側もされる側も神経を使い、場合によっては気まずさ全開でリクライニングを戻して…となるのですが、この形式では心配無用。

前席がスパーンとフルリクライニングさせていても、座席回転が可能なようになっています。シートピッチに助けられてこそいますが、座席背面の特徴ある形状はこれが狙いか!!と実感。

何というか、近鉄特急の真髄ここに見たり。トータルで見れば、名阪・名伊・阪伊間のような長時間の普通車移動なら、この形式を狙う価値は大です。座席周りの環境に限ればアーバンライナー要らんわ、と言われても仕方ないかも。ここまでを見ても、長時間乗れば乗るほどその意味と意義が実感できるアコモデーションと言えます。

トイレは車椅子対応を見込んだ大型のもの。温水便座になってる辺り、イマドキらしい設備ですね。

反対側には洗面台。近鉄特急お約束のおしぼりもここにセットされています。

この形式、ドア脇の喫煙室以外は全面禁煙となっています。喫煙室入口は室内側への折戸で入るようになっています。

腰掛けるバータイプベンチとクッションが備え付けられたささやかな息抜きのスペース。

難波駅から、22600系もチラリ。

客室内全景は16600系と見た目全く差異がありません。

こちらでは、バネの調子の問題かセッティングの偶然か、フットレストの土足禁止面を向けて固定ができました。

この面に足を載せて、リクライニングを効かせた状態、アームレストさえ元位置の角度で保たれれば、普通席としてはかなりリラックスできる環境になったものとつくづく惜しい…。

ともあれ、近鉄特急らしさという点と、現実の居住性という点で総合的にはかなり凄い車両になったんじゃないかと思わされました。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通1不詳1280mm
普通2YR2581050mm