南海50000系(ラピート・更新改座車) 最終確認時期:2018年02月

関空鉄道アクセスの顔といったら、正直「はるか」よりこっち。ガンダムと組んだりLCCと組んだり、継続的に話題も提供している積極性もそんなイメージに一役でしょうか。

最近はインバウンド需要のお陰もあってか、イイ時間帯だと満席の列車も数多くなり、一頃の閑古鳥・空気輸送ぶりを見ていた側からすれば今宮戎のご神徳で商売繁盛なによりなところ、噂の「なにわ筋線」へは車両規格上ペケな模様。ただ、開業予想が2031年と暫く先で、車両寿命の方が先に来ちゃいそうですね。

で、ここ数年は制御装置等の交換を軸に更新工事が行われていた様子。先日、別用で関空から乗ろうとしたラピートの車内を見たら、あまりの変貌ぶりにビビってつい往復乗っちゃいました。

まずは普通席。車内の基本的なフレームは変わっていませんが、床面はカーペットが敷かれ、通行時の音が和らぐようになっています。

これは、多分に無遠慮に通り抜ける人の数が増えたから、という遠回しなメッセージでもあるんでしょうね。窓下壁面から床面にかけて、一定の色調に基づいたトーンで形作られていた更新前の様子から、あえて変えざるを得なかった事情が透けて見える気がします。

座席は、特徴ある脚台そのままに上物だけ新品交換されています。カラーコードは以前のものを踏襲していますが、色分けや濃さについては総じて濃いめ、濃厚な風合いになっています。

小糸工業製の回転油圧リクライニングシートで、ソデ体造形は先端部分のサークル模様などに以前の形状を意識しつつも、区間利用客の増加を反映したかレングスが短くコンパクトに、また横幅もややショボ目になっています。

背ズリは12000系サザンプレミアムに似通っていますが、ヘッドレストの張り出しは少しおとなしめ、背ズリも横に少し張り出した反動か、ややフラットとなっており、ランバーの支持についてイマイチ感が残ります。また、割と気付かれづらかったインアームテーブルの代わりに、シートバックテーブルと折りたたみ式ドリンクホルダー、杖や傘を立てかけられるバンドが設置されました。

座面については、ヒップからランバーが落ち着かない形状に退化しちゃいました。別稿に掲げる予定の京阪8000系プレミアムカーも小糸工業製で、同様の見解となりますが、最近の同社製座面は座面の背ズリ接合部との成形、加工について悪い意味で変な方に舵を切っている感があります。どうにも安着姿勢が取れない、ヒップが前滑りしがちなストレスの溜まる座面になってしまいました。ダメ。

難波方2両のSS(スーパーシート)についても、床面はカーペットが敷かれ、デザインから静閑性にシフトした更新となったようです。尤も、暖色の使い方やコントラストを踏まえて考えれば、これを初見とすればそれはそれで受け入れられそうな風合いです。

カラーの配置が普通席(レギュラーシート)と逆になっており、暖色系のムードが強く感じられる室内になっています。

座席は普通席と同様に上物だけの交換となっており、こちらも小糸工業製の回転油圧リクライニングシートとなっています。

ソデ体はこれまた普通席のイメージで前後にストレッチさせたものとなっていますが、アームレストは従来の木質を改めてレザーになっています。元々、かなりの大形座席が設置されており、SS席についてはそれに負けず劣らずを指向した感があります。

ソデ体形状の変更はぱっと見にかなりのイメチェン感をもたらしていると思いますが、個人的には以前のソデ体の方が「レトロ&フューチャー」なコンセプトに沿っていたんじゃないかな、と感じます。

シートバックテーブルは、盤面やラッチ部分を見ると、JR新幹線やグリーン車で小糸工業(コイト電工)製であればお見かけするタイプですが、手前にスライドして引き出すギミックはありません。この辺はコストの関係かな。で、下降時は盤面・アームともに自重に負けてドカンと落ちてくる感じで、クッションとダンパが入っている挙動ながら、それらが役立たずな状態です。

アームレスト先端にJR西日本や北海道の特急グリーン席で見掛けるスライドフックタイプのドリンクホルダーが設置されています。収納時はアームレスト先端のサークルデザインにうまく溶け込んでますね。

あとまぁ、凄い蛇足なんですけど、リクライニングボタンを押し込む際、縁にある金属パーツに接触すると思いますが、冬場だと指先のパチパチ君が凄くて、ボタンを押そうとするとビクっと来ます。地味にビビるというか人に依っちゃ心臓に悪い感があります。

2人掛席で見てみると、センターアームレストはJR東日本のE2系後期増備車やE5系グリーン車でお見かけするタイプのパーツが流用されています。しかし、先述の普通席からそうだったのですが、イマドキの更新・改座にしてACコンセントは設置されなかったんですね。乗車時間がイイトコ40分、という割り切りなのかもしれませんが、今後ある程度の年数を使うことを考えれば、苦情が出るかもしれませんね。

シートバックのカーブはあちこちの車両の類似ではあるのですが、具体的に「これ」というモデルが見当たらないという結果論から南海オリジナルっぽさが光ります。また、上下移動はできませんがヘッドレストピローが設置されています。

リクライニングの挙動は、座面が背面傾斜と連動しないタイプでして、SS席の余裕故、デフォルト角度でもまぁまぁ座れるようになっています。しかし、普通席の背座接合部の形状、特に座面後端の加工形状は同様に悪く、リクライニングさせると尾てい骨から臀部に鬱血感が残るもので、改善が必要ではないかと思う程度です。

改座前の座席は割と「人間をダメにする」タイプの抱擁感と着座感から短時間乗車でも安楽性が高かったこともあり、今回のモデルは背ズリの挑戦的なシルエットこそカッコ良さ感があるものの、やはり伝統の小糸工業らしからぬ感が強く、少々ガックリ。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
レギュラー2不詳(小糸工業製)1030mm
スーパー1不詳(小糸工業製)1200mm
スーパー2不詳(小糸工業製)1200mm